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左右のバランス

 秋田犬を飼育なさっている皆さんは、散歩や運動をどのようになさっているでしょうか。最も多いのは徒歩ではないでしょうか。次に多いのは、犬とともに走るジョギングタイプかも知れません。また、自転車でなさる方もいるでしょう。この中で今回は、自転車を使用することに少し触れてみます。

 展覧会にまったく興味はなく、家族の一員としてのみ秋田犬と暮らしている方は、横転など事故がないよう細心の注意を払うことを忘れなければ、自転車で散歩や運動をしても特に問題はないと思います。ただ、引き綱が自転車にからまったり、車両が不用意に接近することによって犬が過剰な反応を示せば、徒歩やジョギングに比べて格段にケガをするリスク、交通事故に遭う危険性が高い点は否めませんが。

 それとは別の観点でお奨めできないのは、展覧会での上位入賞に情熱を燃やしているオーナーが、自転車を使用して運動をする行為です。なぜ自転車を使わない方がいいのか。それを理路整然と説明できるとすれば、秋田犬を作りあげるという点で、高い見識を持っている人と言えます。

 では、簡単に説明してみましょう。自転車に乗って秋田犬の運動をする際、引き綱を持つ人は利き腕に持つのが普通です。逆の手に持てば急な事態に対処しにくく、自分自身の安全確保がむずかしくなります。従って、利き腕に引き綱を持つのは必然的なはずです。

 仮に自転車で愛犬の運動をしている人が、右利きだとします。秋田犬は意識的か無意識か、自転車から離れようとすることがあります。それをあえて走行すると、右腕には程度の差こそあれ負荷がかかります。これは、犬が右半身に力を入れて踏ん張っている状態です。このようにして長期間、自転車を使用した運動をしていると、秋田犬は人間の利き腕側により多くの筋肉がつき、逆の側がおろそかになる傾向がみられます。また、耳も傾斜しがちです。

 結論を言えば、自転車での運動を長期間続けると、左右の筋肉のつき方が微妙にアンバランスになっていき、耳の角度にも癖が出てくるということです。当地の大ベテランで、約20年間にわたって「最も厳しい審査員」として全国に鳴らした方は、会場で犬を一見しただけで「自転車での運動を続けた犬か、そうではないか、容易に判る」といいます。ここから得られる教訓は、「秋田犬の運動は左右対称のバランスを考えてやるべし」ということです。体の片方だけに長期間負荷をかける運動は、慎むべきです。

 自転車での運動期間が長ければ長いほど、左右のアンバランスさはより際立ってくるでしょう。これが展覧会で上位を目指すにあたって、良いはずはありません。ただ、前述の大ベテランはこういいます。「実際に会場で審査をして、自転車で運動をした犬であるかどうかを見抜ける審査員は、多くはない」と。なら安心、と思う方がいるかも知れませんが、ふだんから数多くの犬を見てまわるなど勤勉で優れた審査員もいますので、やがてはそうした審査員の厳しい眼をかいくぐることができなくなります。何度か出陳しているうちに、いずれ優れた審査員に出会うことになるからです。

 前述にもあるように、自転車で長期間運動してきた秋田犬は、展覧会場でも微妙に一定方向に耳を傾斜させる癖を、知らず知らずのうちに身につけます。たとえそれが一瞬表れた癖だとしても、優れた観察力を有する審査員はそれを見抜きます。審査の最中に、耳を傾斜させない特別な綱の持ち方がありますが、それをこのコーナーで種明かししてしまっては自転車で運動しているオーナーにとって安易すぎますので、いろいろ試してみてみずから結論を導いてみるといいでしょう。

 ちなみに、前述の大ベテランは体の左右を均等に鍛えることを常に心がけ、全国で誰もやっていない特殊な運動方法で、複数の名誉章犬を世に送り出してきました。上位入賞を目指すなら、左右のバランスを保つための運動がいかに大切であるかを念頭に置いて、日々トレーニングに励みたいものです。

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