秋田犬の基本色

  秋田犬の指定毛色には赤、白、虎、胡麻、斑(ぶち)、黒の6種類あります。このうちスタンダードなのは赤、白、虎の3色でしょう。6色の中には、現在の日本にはいないとされる黒も含まれています。確かに、発祥地秋田県でも黒は見たことがありません。50年以上のベテランオーナーによると「かつては、いた」といいます。

 ある時、このような問い合わせがありました。「私の秋田犬は、もしかして黒ではないでしょうか。写真をお送りしますので、見ていただけますか」。拝見したところ、それは黒ではなく、背中の白い線が著しく少ない黒虎でした。「私の犬舎には黒がいるよ」というオーナーでも、黒の度合いが極端に強い黒虎を黒と誤認しているケースは、意外とあるのかも知れません。

 このほか、米国ではシェパードのような色や銀色がかったような色までありますが、日本の秋田犬と米国の「アメリカンアキタ」は異なる種類に位置づけられていますので、同様の論じ方はできません。ここではあくまで、日本の秋田犬の色の中からスタンダードな3種類をご紹介します。

 当地のベテランオーナーは、こういいます。「色にこだわって作出すれば、顔がまずくなる。顔にこだわれば、満足な色が出てこない。秋田犬を作り出すは、なぜ、こうもむずかしいのか」。秋田犬の世界では知らぬ人がいないほど有名なこの方ですら、完成の域に達することができないのですから、秋田犬はとても奥が深いです。

 ご覧の色は虎と呼びます。上の写真が生後約60日のとき、下は同じ犬が成犬になった姿です。

 虎は、色そのものがややいかつい印象を与えるため、一般受けはしにくいのですが、ベテランオーナーの中には「虎以外は秋田犬ではない」と豪語する人までいるほどです。

 虎は奥深い色合いで、白黒の絶妙なバランスを出すのはとてもむずかしいです。虎一筋に半生を捧げているオーナーまでいるほどで、青森県などには虎しか飼育しない地帯もあります。


 ご覧の色は、秋田犬の中で最もスタンダードな赤です。

 実際には「赤」というより、「茶」と呼ぶ方がふさわしいのかも知れませんが、秋田犬の世界では赤という呼び名以外は使いません。

 ただ、初めて秋田犬を飼育なさるということで、当クラブにご注文なさる方々の多くは「茶がほしいんですが」とおっしゃいます。

 この色は秋田犬の数、そして展覧会に出される数では最も多いです。


 ご覧の写真は、見たままのとおり、白です。きれい好きな方で、ふだんから犬のシャンプーをはじめ手入れをよくなさる方には、最もふさわしい色かも知れません。

 手入れをまめにしてやれば、スタンダードな3色の中で最高に美しい色だからです。言い方を換えると、手入れが面倒、または嫌いな方にはふさわしくありません。

 とてもよく手入れをした白の秋田犬は輝くような白さで、散歩をしていてもみんなが振り向くほどです。

 虎や赤からも白は生まれますが、赤から生まれた白は体の一部にうっすらと赤色を残している場合が少なくありません。

 また、赤や虎は鼻が黒いのですが、白の鼻は生まれたときに黒くても、ほとんどの場合は成長とともに標準色の小豆色に変化していきます。鼻が黒いまま成長するケースは稀です。
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