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危機意識の共有を(1)

 2016年現在、秋田犬界は危機的状況にある。「根こそぎ」と表現しても過言ではないほど、秋田犬が中国に大量流出している。そこで今コラムでは、さまざまなベテランからの情報をもとに、この"問題"を論じてみたい。

 秋田犬原産地の秋田県をはじめとする全国の熟練犬舎には平均5、6頭の若、壮、成犬がいるのが従来の形である。しかし、現在は1頭しかいないという事態が続出している。そうなると交配も必然的に頭打ちになり、国内に秋田犬が増えていかない。

 では、なぜ秋田犬が著しく減少してしまったのか。とりもなおさずそれは、中国への大量流出が背景にある。確かに、これまで同様、欧州にも秋田犬は輸出されているが、現在は10頭海を渡るとすれば9頭までが中国と察せられる。今のところ赤が中心だが、虎や白にも独特の魅力があるため、いずれ近い将来、赤と同様に虎、白も大量流出するのは予想に難くない。

 「中国の飼育環境は、とにかく劣悪。狭い場所に何頭も閉じ込めて置くし、耳が立たない犬には鉄板を入れて立たせるなどということも平気でする。そして、邪魔になれば殺す。だから私は、1頭たりとも中国に大切な秋田犬を送り出すことはない」と、中国通の秋田犬飼育者は胸中を吐露した。

 当クラブが海外に秋田犬を旅立たせるにあたっての考え方は、「秋田犬の価値と志」で触れた。ここに一つ付け加えたい。年間10数人の中国人が「秋田犬を売ってくれ」と当クラブに接触してくるが、中国に対しては過去に1頭たりとも流出させたことはないし、将来的にもあり得ない。

 当クラブが把握しているだけでも、継続的に中国へ流している日本人業者は5人を数える。秋田犬展覧会の最高峰、本部展で名誉章を獲得するほどの実力者も含まれ、いずれも秋田犬と半生をともにしてきたベテランである。そうした人らの中には中国流出に対して危機感を持ち始めている者も見受けられるが、恐らくは「カネになる」という"甘美な呪縛"からは逃れられまい。

 ある業者はこれまでに2,000頭もの秋田犬を流出させた、と聞く。また、ある業者は展覧会場で数人の中国人に取り囲まれて袋叩きにされる寸前だったという。購入した中国人との間で、何らかのトラブルがあってのことだろう。秋田犬に限らずいかなるビジネスでも、中国人とこじれると恐ろしい事態になりかねない。日本に住む中国人に指示し、報復させるのはごく普通だ。

 これからも中国には大量に流出し続け、遠くない将来、「良い秋田犬がほしければ中国へ行け」という、およそ冗談とも思える時代が来るかも知れない。また、本部展でもやがて中国から大挙して参戦し、日本の大相撲のごとく、日本人は優勝できない時代がすぐそこまで迫っているようにも思える。日本では今、ほぼ底をついた状態であるがゆえに、中国人は欧州に旅立った犬たちにも触手を伸ばしているとの情報もあるなど、空恐ろしい状況だ。

 接触してくる中国人は純然たる愛犬家ではなく、おおかたは業者で、日本で買い叩き、中国の富裕層に驚くほどの高額で売りさばいていると察せられる。中国への流出に歯止めをかけるには、秋田犬組織の力では所詮無理で、流出させている日本人業者のモラルに頼るしかない。このままでは本当に、日本に残すべき優れた秋田犬が消滅する。今こそ危機意識を共有すべきと考えるが、多額の収益が絡むがゆえに、これからもとめどなく流出し続けることだろう。

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