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残されぬ「虎の巻」(2)

 今コラムは、先に公開した残されぬ「虎の巻」(1)の続編である。筆者にとっても新鮮な驚きに映った新たな情報を、当地の秋田犬大家と晩年まで交流があった秋田県内の秋田犬愛好家が耳打ちしてくれたため、少しだけ触れておきたい。

 先のコラムは、前述の秋田犬大家が2015年に逝去したことによって全国でもきわめて珍しい秋田犬飼育、管理に関する「虎の巻」がもはや世に出ることはない、という趣旨を含む内容だった。

 だが、「全国で最も厳しい審査員」とも評されたその方は、慢性腎不全や糖尿病など複数の病と闘いながら、「虎の巻」の原稿を晩年までこつこつ書きためていた。かつて当コラムの筆者に対し、「80を越えると、何かを完成させる気力も失せる」と話していたが、病を押して、命を削りながら一文字、一文字、原稿用紙にしたためていたのだろう。

 この秋田犬大家と交流があった人が夫人などから聞き及んだところによると、仕上がった原稿を秋田犬団体に託すことを遺言としていたという。なぜ託したのか。今となってはご本人に確認のしようもないが、察するに同団体に一冊の書籍として世に出してもらい、正しい管理法、飼育法、展覧会での競い方など秋田犬のイロハを伝承したかったのではないか。

 だが、現状は故人の遺志とは異なるように思える。秋田犬団体がその方の原稿を書籍化するために動いているとの情報はないし、家族(遺族)がその原稿を返してくれるよう要望しているのに対しても応じていないという。

 結局、何一つ物事は進まず、全国の秋田犬飼育者にとって"羅針盤"にもなり得る原稿は、このままでは書籍として日の目を見ることもない。故人の遺志に反するのかも知れないが、原稿を執筆者の家に戻し、家族の手によって出版するのが理想に近いのではないか。「虎の巻」が世に出ることを祈りつつ、今後の動向を見守りたい。

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