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草を食む行為

 当クラブから子犬をお迎えいただいた皆さんからの質問に「散歩中に草を食べることがあるのですが、害はないのでしょうか」というのがあります。ある獣医師がペット相談に関するテレビ番組の中で、「それはやめさせた方がいいです」と話していました。しかし、地元の獣医師にもさまざまなアドバイスをしている当地の大ベテランは、それとはまったく逆の考え方です。「草を口にする行為に対して神経質になる必要はない。むしろ、その行為自体は必要なことだ」と。無論、大ベテランは秋田犬についてのみそう指摘しており、別犬種の場合はその限りではありません。

 「神経質になる必要はない」とする論拠を説明してみましょう。人間もそうですが、摂取した脂肪分を分解するために犬も胆のうから胆汁を分泌する必要があります。胆汁の出を促進するために、犬は散歩中などに草を口にすることがあります。といっても、草を食べている、つまり胃の中まで押し込んでいるわけではなく、喉の奥周辺にとどめています。その行為によって、胆汁の出を促進しようとします。口にした草は、黄色い液体とともにやがて吐き出します。黄色い液体こそが、胆汁です。ただ、うっかり食べてしまい、便の中に草が混じっているケースもないわけではありません。

 当地では、秋田犬が草を食んで具合が悪くなったり、命を落とした事例はありません。ただ、草を口にする行為に対し、「秋田犬の場合も、それはやめさせた方がいい」という獣医師がいるとすれば、秋田犬の特性に対して十分見識のある方でしょうし、それなりの理由があってのことでしょうから、「なぜですか」と質問し、明確な答を求めるべきです。

 「草は汚いから」などと答えるとは考えにくいですが、幼稚な回答しか示さない獣医師だとしたら、今後長いつきあいをしていいのかどうか、真剣に考えるべきです。秋田犬について信頼の置ける優れた獣医師を選べるかどうか。それはまさに、愛犬が健康で長生きできるか否かの、分岐点となります。獣医師の力量には雲泥の差がある、というのが当地のベテランオーナーの一致した見解です。

 「草を口にするのはやめさせた方がいい」という論拠で考えられるとすれば、回虫などを持った犬がたまたま愛犬が口にした草の上に便をしていた場合、その卵を取り込んでしまう危険性があるということでしょう。また、獣医師によっては草に細菌がついている可能性を指摘するかも知れません。つまり、草そのものへのリスクよりも、草に付着している「何か」に対する心配です。

 山中や林野では可能性を否定できませんが、日常の散歩圏内に有毒性の草が生えている確率は低いはずです。まして、どの種類の草を口にするかを犬はDNAレベルで親から子へ、子から孫へ受け継がれていて体で知っているでしょうから、好き好んで毒性のある草を飲み込むとは考えにくいです。

 ただ、胆汁を促進させるために草を食む行為を許していいのか、何かを取り込むリスクを考えてやめさせたらいいのか、飼育者も迷ってしまいます。そこで、前述の大ベテランが奨める結論としては、こうなります。草を食む行為そのものは許容範囲。その行為によって、もし回虫の卵などを取り込んでしまったら、やがて犬に食欲が旺盛なのに何となくやつれた様子が表れます。そうした場合は、虫下しを適量投与してみましょう。短時間のうちに、便から回虫が出ます。また、何らかのウイルス、細菌は草を口にする、しないに限らず、常に生活空間の中に存在するわけですから、ナーバスになる必要はありません。

 このコーナーの内容は、前述の大ベテランが50年以上、秋田犬と生活をともにしながら観察、研究した上での結論ですが、「私は獣医師のアドバイスこそが唯一絶対のものと信じる」との考えをお持ちの方に対しては、当クラブが疑問を呈するものではありません。

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