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 外国人への譲渡

 秋田犬を家族の一員として迎える場合は別ですが、ドッグショーでの入賞を目指して秋田犬を迎えようとする外国人には、共通した点があります。それは、購入前に多くの事柄を要求する点です。数少ないかも知れませんが、これから海外に秋田犬を旅立たせる機会がある方も日本国内にはいると思いますので、購入にあたって外国人が希望する代表的な点をいくつか挙げてみましょう。

 最も顕著なのは、何カットもの写真の送付を求める点です。正面、斜め前からの各全体像のほか、下の写真のように頭部のアップ写真、真横の全体像、バックスタイルなどを希望します。無論、顔のアップ写真も求めます。このうち頭部は頭骨の形を見るため、またバックは尾や後肢、腰の筋肉の力強さ、さらには膝関節はどうか、といった観点からチェックするようです。

 日本人同士で譲渡する場合は、何カットもの写真を要求することはほとんどないでしょうが、海外、特に欧州は一般的なようです。なぜ、日本ではこのような例がないかというと、何カットも要求するという行為はオーナー側などにかなり煩わしい思いをさせるのに加え、「何カットもの写真を求めるほど私の犬は信用できないのか」という不快感を与える可能性があるためですが、犬飼育の熟練者を中心とする外国人はこの点、まったく遠慮なく10数カットは平気で求めてくる人もいます。候補犬が2頭、3頭いれば、それだけ撮影に伴う手間はぐんと増します。

 これに加え、日本サイドにとても煩わしい思いをさせるのが、レントゲン撮影を求める点です。前脚、後ろ脚の膝関節、股関節だけの場合もあれば、体の要所、要所のレントゲン写真を求める場合もあり、そこで何らかの欠陥が見つかった場合、レントゲン撮影に対する経費倒れのままキャンセルされます。

 さらに、日本の展覧会では歯が1本抜けていれば歯の箇所によって1点-5点の幅で減点されるなど極端に大きなダメージには至りませんが、欧州のドッグショーでは審査員によって決定的な減点を課す場合もあるため、外国人の購入希望者は欠失歯をとても嫌います。たとえ後天性であっても、「歯が1本なければ、交配はできない」という人もいるほどです。

 すべて"Wonderful"となって初めて外国人への譲渡が決まるわけですが、ドッグショーに参加するのが目的の場合は必ず、秋田犬社団法人の血統書に加えてJKCの英文血統書の添付も求めてきますので、これまた日本側にとっては少なからず煩わしさの種となります。さらに、旅立つ生後日数の制限は国によって90日以上、120日以上などばらつきがあるほか、狂犬病がないとされる日本からの空輸であっても、1カ月以上前に狂犬病の注射を打ち、獣医に英文で健康証明書を書いてもらう必要があります。

 このように、日本人に譲渡する場合の難易度が「10」だとすれば、外国人に対しては「100」にも「200」にもなりますので、英語でのやり取りができ、こうした問題を一つひとつ面倒くさがらずに解決できる場合のみ外国人に譲渡した方がいいでしょう。それから、後払いによる決済は避けることをお奨めします。後払いを許容してしまうと、代金を踏み倒されたり、「気が変わった」などと言って玄関先で犬の受け取りを拒否したりするなど、後々後悔しかねません。

 冒頭にあるように、外国人でも秋田犬を家族の一員としてだけ求める人は、2、3カットの写真を受け取る程度で、レントゲン写真やJKCの血統書も希望しない場合もありますので、かなり楽です。ただ、一部の富裕層を除けば外国人の値切り方は日本人の常識を超える場合が多いですので、外国人と商談をしてもまとまる可能性はきわめて低いと言わざるを得ないでしょう。結局は、ほとんどがやり取りをしただけのくたびれ儲けとなりますので、最初の時点で明確に価格を示し、そこから値切らせないことが重要です。

 また、東南アジアやアフリカ諸国など途上国の中には「犬をそちらまで迎えに行き、その時キャッシュで払いますので、VISA取得のためのインビテーションレター(招聘状)を送ってもらえますか」と希望する人がいます。先進国なら別ですが、途上国の人からこのような希望を提示されたら、承諾しない方が無難です。成田空港に着いたとたん、すでに日本に不法滞在している仲間や知人と、行方をくらましたりすることがあります。目的は犬の購入ではなく、日本人の誠意に付け込んで入国し、不法滞在をして働くためです。全員がそうだということではありませんが、これに騙されて日本に住みつく例が多発していますので、細心の注意を払うべきでしょう。

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