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前脚とスケール
 当地のベテランオーナーは言います。「秋田犬の評価には、明らかに流れがある。少し前まではスケールが大きくなくとも、形の良さで特優や名誉章が獲れる可能性があった。しかし、今はスケールの大きさが求められる。ダイナミックスさが必要」と。

 支部展、総支部展、本部展を見ると、形の良さで勝負する犬、ダイナミックさで勝負する犬に大別することもできるようです。大きくなくとも形の良い犬を作ろうとするのが最近まで主流でしたが、「それでは勝てない」という考え方に移行してきており、熟練繁殖者もスケールの大きな犬を作ることに再び眼を向けています。

 ただ、スケールの大きな犬は、その体格ゆえに骨格が定まるまでかなりの月数を要するため、仕上げるのに根気がいります。また、幼犬、若犬時には脚長な印象を与え、若いうちから勝負をかけようとするオーナーには向かないようです。歳月をかけてじっくり熟成し、壮犬、成犬になって堂々たる貫禄で他を圧倒するのが本来あるべき勝利パターンです。「スケールの大きな犬を、若いころは展覧会に出してはいけない。大器晩成型だから、壮犬、成犬で勝負するべき」というのが冒頭のベテランオーナーの持論です。

 スケールの大きな犬を子犬の段階で見分けるのはむずかしく、「たとえ50年秋田犬と暮らしてきた人でも、よく観察していなければわからない」と同オーナーが言うほどです。今回、それを見分ける方法の一端をご紹介しますので、興味のある方は参考になさってください。

 前脚を撮影した2枚の写真を上に掲載しています。どちらも同じ犬(白、オス)で、右側が生後60日を少し経過したり、左側が生後約10カ月半です。この2枚の写真を見比べただけで、答えがひらめいた方はなかなかのものです。

 まず、右側の写真をご覧ください。膝関節のすぐ下のあたりが両脚とも心持ち膨らんでいるのが分かりますか。これがスケールの大きな犬になる"サイン"です。この膨らみは前脚だけに表れる特徴で、関節ではなく筋肉です。つまり、スケールが大きくなる前段階としてこの部分の筋肉が発達しているのです。スケールの大きさを見込めない子には、この膨らみは見られません。

 この膨らみは、生後10カ月あたりで完全になくなります。生後10カ月半の左側の写真では、膨らみはまったくありませんね。スケールが大きい犬かそうでないかを見分けるには、これが最も分かりやすく有効な方法ですが、前述のベテランオーナーともなると「私なら生まれてすぐにわかる。その方法を知っているのは、全国でもほかにいないだろう。苦心の末に見つけた方法だから、誰にも教えられない」といいます。

 子犬の見方一つ取っても、漫然と飼育している人と、たゆまなく研究し続けている人とでは天と地ほどの差がつき、結果的にそれが豊かな素質に恵まれた秋田犬を生み出せるか、いつまでたっても良い犬を作り出せないか、の明確な分岐点になります。それほど秋田犬は、奥が深いわけです。

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