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これも天然記念物

 秋田県大館市を発祥地とする国天然記念物の生き物は、秋田犬のほかにもう1種類あります。それは比内鶏。ハチ公クラブのホームページで比内鶏を取り上げるにはやや違和感がないわけではありませんが、「大館発祥の天然記念物つながり」で、また、秋田犬ファンの皆さんに大館市を少しでも知っていただく意味で比内鶏も紹介してみたいと思います。

 秋田犬は昭和6年に、比内鶏は同12年にそれぞれ国の天然記念物指定を受けました。かつて比内鶏の発祥地は大館市ではなく、比内町でした。しかし、同町は平成17年6月20日の合併によって大館市に編入され、現在は同市が誇る天然記念物となっております。

 秋田犬と比内鶏。大館市では、いずれがより珍しい存在でしょうか。洋犬の"台頭"やベテラン飼育者の引退などによって秋田犬は同市内でも希少な存在になってきていますが、それでも稀に散歩風景を目にすることができます。

 「鶏と散歩する人は基本的にいない」という点を差っ引いたとしても、比内鶏を見るチャンスはきわめて少ない飼育者とその家族や友人、知人など関係者を除けば皆無に近いと言えます。「幻の鶏」という表現こそしませんが、地元ではそうした存在であることは疑いようもなく、1度も比内鶏を目にすることなく人生を終える大館市民の方が圧倒的に多いほど超希少な鶏でしょう。

 天然記念物比内鶏と同じラインにいるのが比内地鶏です。比内地鶏は、秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」をはじめとする高級食材で活用するために、比内鶏のオスと米国原産の赤鶏「ロードアイランドレッド」のメスとの交配によって作り出された交雑種です。比内地鶏は薩摩鶏、名古屋コーチンとともに「日本三大美味鶏」の一角に名を連ねています。

 比内鶏と比内地鶏のいずれがより美味かというと、間違いなく比内鶏に軍配が上がります。ただ、比内鶏は比内地鶏より1回りも2回りも小さいため、すばらしい味とはいえ肉量が少ないほか、天然記念物ですので肉として市場に出すこともできません。そうしたことから、より肉量の多い比内地鶏が誕生したわけです。

 旧比内町在住の大館市役所職員の1人に「比内鶏と比内地鶏の外見的違いが分かるか」と訊ねたことがあります。彼は答えました。「分からない」。それは、ある意味当然かも知れません。前述のとおり、発祥地ですら比内鶏を見る機会が皆無に近いからです。

 下の写真をご覧ください。上は比内鶏のオス、下はメスです。比内地鶏のオスはほぼ全身が茶色なのに対し、比内鶏のオスには羽の一部、尾、そして腹部が黒色(黒笹)をしております。単なる黒ではなく、光の反射角度によってグリーンやエメラルド色のように見えたりします。

 大館市の桜まつり(桂城公園)期間の5月初旬には展覧会が開かれ、県知事賞など各賞を決めます。色だけではなく、頭の大きさや羽の角度、全体的なバランスなどで総合点の高さを競います。展覧会が開かれるという点では秋田犬と同様で、まったく同時期の5月3日には同会場で秋田犬展覧会の最高峰「本部展」が開かれます。

 比内鶏のメスには、写真のようなクリーム色系とチョコレート色に近いタイプの2通りあります。多くの鳥類がそうであるように、オスに比べてメスは地味な色彩です。比内地鶏のメスは比内鶏のメスよりも大きいほか、茶色のみですので見慣れている人には一見して判別できますが、比内鶏を見る機会がなかった人にとって比内鶏と比内地鶏の判別は、簡単ではないかも知れません。 

  なお、比内鶏と同様、昭和12年に国天然記念物となった「声良鶏」がおりますが、これは大館市や鹿角市などを中心とする米代川流域が発祥地で、比内鶏のように大館市(旧比内町)に限定されるものではないため、紹介を割愛させていただきました。

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