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わさおに会う 

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 わさおの生活空間。彼の主人は、焼きイカ店を営む。店に隣接する駐車スペースに続くようにして犬舎があるため、散歩や"仕事"で出かけている時以外は、観光客がいつでも会えるようになっている。「機嫌が悪いこともあります」との看板を設置し、食べ物をあげたり触れたりしないよう、注意を促している。噛傷事故を未然に防ぐ意味でも、観光客がこれに従わなくてはならないのは言うまでもない。まして、みずからにプライドを持っているであろう彼のような性格の"秋田犬"には、なおさらだ。

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 犬舎と海に通ずる道の入り口をはさむ「わさお」としたためた小屋では、猫たちが気持ちよさそうに昼寝を楽しんでいた。恐らくは居ついたノラ猫たちで、わさおの眼前をゆうゆうと通りすぎる。彼らに対してわさおは、さして関心を示すふうもなく、猫たちも同様。互いに干渉することなく、1つの空間を共有しあっている。何とも平和な光景だ。

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 わさおは時おり、瞑想でもするかのように目を閉じる。寝ているのではなく、頭の中を「無」にしている印象。眼前に観光客がいようがいまいが、この姿勢をしばし崩さなかった。秋田犬というより、「獅子」にも似た風貌。内面にたずさえているものも、本来の秋田犬とはやや異質な気がする。

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 わさおの主人が営む焼きイカ店。新たな主人との出会いによって、彼の人生ならぬ"犬生"は一変した。それは、主人とその家族にとっても同様ではないだろうか。全国にこれほど知られるとは誰1人想像しなかっただろうし、まして忠犬ハチ公以来、映画になるなど考えられるはずもない。今も日々多くの観光客が訪れ、主人の店に潤いを与えているわさお。焼きたてのイカは、磯の味がした。

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 わさおの犬舎からほんの数メートル離れた、海の見える丘にとても小さな墓があった。主人の敷地内であることからすれば、わさおが家族の一員として迎えられる以前に愛された犬と想像できる。観光客の誰も見向きもしないほど小さな小さな墓。手向けた花も枯れていた。しかし、亡くした時の主人の悲しみと思い出がその光景からは伝わってくる。動きは何一つないが、映画のワンシーンのような1コマだった。

 

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 わさおの視線の先には、五能線の線路が横たわっている。彼に別れを告げ、秋田県能代市側に向けて海岸沿いを走ると、電車が併走していた。電車はゆっりくと走っている。先回りしつつ、撮影ポイントを見つけて撮ったのがこの写真。わさおの犬舎から、15分ほどの位置であろう。

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