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事故の未然防止2

 事故の未然防止1では1歳ぐらいまでの最も好奇心旺盛な時期に起きやすい異物誤飲に触れましたが、今回は骨折について言及してみたいと思います。秋田犬の骨折は子犬に最も多く、次いで高齢犬と考えられます。子犬は骨格形成が不安定なのに加えて筋肉も未発達のため、小さな衝撃でも骨折しかねません。

 一方、人間と同様、高齢になると徐々に筋肉が衰えてきます。この結果、若いころにたやすく往来していた段差やわずかな階段でもつまずいたり、よろけたり、滑ったりして骨折につながることがあります。

 秋田犬にとって、骨折しかねない場所はいくつもあります。一例を挙げてみましょう。散歩に連れ出すために、老飼い主が鉄製の犬舎からいつものように愛犬を出そうとした時、小学1年の孫(男児)が完全に犬舎から出たと早合点して勢いよく扉を閉めたため、まだ犬舎から出尽くしていない生後4カ月ほどのオス秋田犬は出がけにぐるぐる振っていた尾を運悪くはさんでしまいました。

 直後、愛犬はとても痛そうな声で鳴き続け、だらりと尾を垂れたままでした。「何をしてるんだ!」と孫を叱りつけると、骨折を危惧した祖父は慌てて愛犬を抱き上げてクルマに乗せ、動物病院に急ぎました。半べそ顔で、孫もクルマに乗り込みました。犬は小学校入学の祝いに祖父がプレゼントしたもので、祖父や両親の協力を得ながらその子が中心となって育てていました。

 レントゲン撮影の結果、不運にも尾の中間付近が骨折していました。同行した孫は、とんでもないことをしてしまったことを子供心にも悟って涙を流しました。その姿に祖父も心を傷め、細心の注意を払わなかった非は自分にもある、と孫に詫びました。

 秋田犬には「巻尾立耳」という表現があります。きりっと巻いた尾、直立した耳が秋田犬の美しさの代名詞であることを意味します。鉄扉に尾をはさまれた秋田犬は治療の甲斐あって骨折こそ完治しましたが、尾を巻くことは2度とありませんでした。

 たとえ骨折しなかったとしても、尾を何かに強く挟まれてから尾を巻かなくなることは、秋田犬の場合、少なくありません。耳も同様です。あの「忠犬ハチ公」の写真で気づいた方もあると思いますが、彼は左耳が寝ています。真実は定かではありませんが、主人の上野博士亡き後、野犬に噛まれて以来立たなくなったというのが通説です。

 前述の鉄扉に挟まれて骨折したケースに関連し、秋田犬の個体によって分かれる"特徴"に触れてみたいと思います。秋田犬には、尾を巻いたまま微動だにさせない犬と、散歩や餌を与えられる際、そして主人が帰宅した姿が視野に飛び込むや喜びで尾を上下左右にぐるぐる回す犬がいます。骨折した犬が前者のタイプなら扉に挟まれることはなかった、と推察されます。

 祖父や孫との散歩を心待ちにしていたらしいその愛犬は尾をぐるぐる回すことによって喜びを表し、結果、アクシデントに遭遇したとの見方も可能です。感情表現が豊かともにとれる一方、尾根部が弱い、つまり尾の付け根が緩いともいえます。このタイプは、食餌中徐々に尾を下げてしまう傾向がみられることもあります。拡大解釈すれば、秋田犬が事故に遭遇するか否かはもって生まれた性格や癖が影響を与える場合もある、とするのが当クラブの見解です。

 家族の大切な一員である秋田犬が生涯にわたって骨折しないための予防策として、与えるドッグフードのカルシウム含有量をあらかじめチェックしておくなど「食餌で骨を強くする」対応を子犬時からしておくことは、基本中の基本といえます。

 また、散歩時には交通事故に遭うリスクや子犬が側溝付近を歩いて落ちてしまうリスク、別の犬とすれ違う際に噛まれるリスクなど、あらゆる事態を想定してリードの長さが適切か、首輪はすっぽ抜けないかなど、ふだんから綿密な点検をすることをお奨めします。

 さらに、愛犬が犬舎ではなく家の中で皆さんと暮らしている場合、床のフローリングで勢いよく滑って壁などにぶつかる危険性も皆無ではありませんので、場合によってはカーペットを敷くなどの対応も必要でしょう。

 このほか、子どもが子犬を抱き上げた際、抱かれるのを嫌がってもがくなどの勢いで落下させ、骨折することもあり得ます。事故の未然防止1で触れた異物誤飲と同様、骨折も前触れなく発生しますので、秋田犬を迎えられた皆さんは常に細心の注意を払って愛犬と向きあっていただきたいと思います。

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