一方、日本の秋田犬は、闘犬だった時代があります。美しさではなく、強さが評価された時代です。強くするために、土佐犬と交配したこともありました。そうした交配の繰り返しは結果的に、本来の秋田犬の「美」を損なうものでした。そこで純粋な秋田犬の「種」を継承しようと、昭和2年に秋田県大館を本部とする秋田犬団体が発足し、本来あるべき秋田犬の美しさ、伝統を守り伝えてきたのです。 それにしても、秋田犬やハチ公に関するサイトは、欧米に200近くもあるのには驚かされます。日本にも少しずつ増えてきましたが、欧米ほどではありません。欧米での多さは、いかに彼らが忠犬ハチ公に感銘を受け、かつ秋田犬の美に心酔しているかを物語っています。 つまり、欧米人の方が秋田犬の存在意義、歴史的価値、ハチ公にみる「忠義論」などについて、日本人より多くのことを知っているということです。方や、日本人の圧倒的多くはハチ公について、待ち合わせ場所として有名な「渋谷のハチ公」ぐらいにしか認識していないのではないでしょうか。秋田犬を文化的視点から考えると、やはり欧米人の研究心に軍配があがると言わざるを得ません。実際、日本国内に熟練した秋田犬飼育は少なからずいても、ハチ公や秋田犬そのものの「研究者」と呼べる存在は、皆無に近いほど少ないのが実情です。 かつて秋田県でこんなことがありました。知事を表敬訪問したある国の駐日大使が「あなたには、どんなアキタがいますか?」と訊きました。質問の意味を咀嚼できなかった知事は、「はあ?」としか応えられなかったそうです。 「アキタ」が秋田犬を意味することを、知事はそのとき初めて知ったことでしょう。海外で「アキタ」といえば、秋田県ではなく秋田犬を意味します。それだけ秋田犬は、海の向こうでは有名ということです。 後日、知事は秋田犬団体の関係者に「秋田の顔であるあなたが率先して秋田犬を飼うぐらいでないと恥ずかしいじゃないですか」と、たしなめられたとのこと。 知事に限らず、アキタ=秋田犬を知る秋田県民は驚くほど少ないはずです。「ハチ公のふるさと」に住む県民としては、少しでも秋田犬やハチ公についての知識を蓄えていたいものです。 |