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秋田犬の標準
 
 秋田犬の展覧会には、当然のことながら厳格な審査基準があります。審査基準は「秋田犬の標準」とも呼ばれています。ここでは、それを簡単に紹介してみましょう。秋田犬団体による原書は、かなり古典的な表現で理解しずらいため、現代文に書き直したものをさらにリライトしました。これにより、標準的な秋田犬の姿が少しでも秋田犬ファンの皆さんにご理解いただけるのではないかと思います。

★本質とその表現
沈着剛毅、威厳、精悍威勢、素直で忠実、飾り気のない品位と素朴感、視覚・聴覚・臭覚などの感覚が鋭敏、そして動作は鷹揚(おうよう)さの中に敏捷さを兼ね備えている、という具合に秋田犬には非常に多くのことが求められています。

★外貌
体の各部分が正確に構成されていて、バランスが保たれてなくてはなりません。かつ、骨格は強健でゆるぎなく、筋肉や腱、じん帯の各組織がよく発達している必要があります。さらに、つま先から肩までの高さをいう体高は、成長したオスで66.7センチ、メスで60.6センチが標準的なサイズですが、上下3.03センチの範囲内ならセーフです。一方、体高と胸郭の深さの比率はほぼ2:1でなくてはならないほか、体長と体高の比率は100対110で、メスはオスより体高に比べて体長がやや長くなっています。

★頸
太く大きくたくましく、が秋田犬に求められる頚(くび)です。そして皮膚はよく引き締まり、ちょうどよい角度(45-50度)で起立していなくてはなりません。

★頭
頭の骨は大きく、十分に発達していて頭頂はやや平らです。額は広く、シワがなく、はっきりと分かるような縦型のミゾと適度な落ち込みがあります。頬はよく発達し、皮膚にたるみがないことが大切です。

★耳
頭部とのバランスが保たれなくてはならない関係から、やや小さめであることが標準です。そして厚く三角形で、適度に前傾しています。かつ、耳は毅然として力強く立っていることが重要なほか、双方の耳の間隔は広すぎても狭すぎてもならず、バランスのよさが求められます。

★眼
やや三角形をしているのが標準で、目尻はいくぶん上がっています。眼球の虹彩の色は濃い茶褐色で、両目の間隔は広すぎず狭すぎないバランスが大切です。

★鼻
鼻梁は真っすぐで付け根の部分にあたる基部は太く、逆に先端は細いながらも、尖っていてはいけません。また、鼻鏡はよく引き締まっています。

★歯牙
歯や牙は強靭で、噛み合せは正確でなくてはなりません。

★胸
深くよく発達しているほか、肋骨もよく張っている必要があります。

★背腰
背中のラインは直線的で、腰には強靭さが求められます。

★前肢
肩周辺から大腿あたりにかけては適度な角度とともによく発達し、ひじの付き方は正確でなくてはなりません。また、膝の下部分は真っすぐで、太く強く、足は丸く大きく厚みがあります。

★後肢
よく発達して強靭で力強くやや張っていて、飛節(ふくらはぎの上周辺)には角度があります、また、弾力と敏捷力に富み、接地点となる「にぎり」には厚みがあります。

★尾
太く強く巻き、長さは飛節(ふくらはぎの上周辺)まであります。尾の巻き方は、左巻き、右巻き、太鼓巻きと、その形によって3種類のスタイルがあり、ダラリと下げてしまっては絵になりません。

★被毛
毛は太く真っすぐで、下には柔らかな「綿毛」が密生しています。お尻の毛はやや長く、尾の毛はさらに長いなど、体の箇所によって長さが異なります。

★毛色
白、黒、赤、胡麻、虎、斑の6種類が標準とされていますが、黒などほとんど現存しない色も含まれているため、この分類の仕方はすでに時代にそぐわないでしょう。

 展覧会では○後天的な損傷や著しい栄養管理不良○秋田犬として好ましくない毛色○体の色にそぐわないほど虹彩(眼)が著しく淡いもの○欠歯、乱歯や歯の噛み合わせが悪いもの○舌の斑点○臆病や安っぽい態度を取るなど性格が軟弱だったり凶暴なもの○秋田犬としての特徴に乏しいもの、は減点されます。

 減点ならまだ順位がつけられますが、先天的に耳が立たないものや尾を巻かないものは失格となります。極度の恐怖を味わったり、虐待されたり、ストレスが溜まっている、とても緊張している、などの場合尾を下げることがありますが、これらは後天的なもので"復旧"の余地は十分あります。生まれつき尾を巻かない性質の秋田犬は、比較的珍しいのではないでしょうか。

 さらに、先天的に著しく短毛か長毛の犬も失格となります。秋田犬は本来、外での暮らしがふさわしい犬種ですが、室内犬とする方も少なくありません。初めて秋田犬と暮らすという方々は、むしろ多いでしょう。外で暮らすことによって体が反応し、寒い時期は毛が長く、暑い時期は逆に短くなるのですが、室内犬は外ほど温度差がなく快適環境のため、基本的に毛が長くなる必要性に乏しくなることから、短毛になります。先天的な短毛ではないため、外で暮らすようになれば改善されるでしょうが、実際には「座敷犬」で至れり尽せりの生活に馴染んでしまった犬が外での暮らしに順応するにはかなりの時間とオーナーの根気が必要になります。

 このほか、著しく下あごが出ているものや逆にあごがないかのように後退したもの、歯の噛み合わせがまったく変なもの、体の色にそぐわない鼻の色など、展覧会で失格とされる要素はいくつもあります。実際には、その犬の特に良い点と悪い点をいくつかピックアップする形で審査されるわけですが、本来審査対象とすべき点がいかに多いか、おわかりいただけたのではないでしょうか。

 出陳時の体調や心の状態、病気の有無、管理のあり方、毛の状態などによって、本質的に優秀な犬でも良好な成績をあげられないことがあります。また、基本的に質の悪い犬はどんなによく見せようとしても、熟練した審査員の目をごまかせるものではありません。従って、上位入賞はできないことになります。上位入賞をするための鉄則は「管理が五、素質が五」なのです。

 すばらしい血統の子でも、管理が悪いと駄犬になってしまいます。実際、そのような例は多く、熟練オーナーでも自分の管理の仕方は絶対に正しい思い込んで他の意見やアドバイスに耳を傾けない人ほど、管理面でミスをしてしまいます。「幼犬で1席を獲ったときはあんなによかったのに、どうしてこんなになったの」という展覧会でよく聞かれる会話が、それを反映しています。

 飼育歴のきわめて長いオーナーと話をすると、彼らはこんなことを口にします。「だいぶ、よくなってきた」と。生まれてから数十日は、その犬が本部展や支部展で上位入賞できるかどうかは、彼らにもわかりません。しかし、60日よりは90日と、日を重ねるにつれて仔犬は著しく変化します。それを観察して、優れたオーナーたちは「だいぶ、よくなってきた」という言葉を発するのです。素人にはわからない、熟練者だけの世界です。

 
 秋田犬は、生後3年にならないと真の完成美はわからない、といわれます。3年経つと、渋味のある古武士的風貌が表れてきます。幼犬、若犬時代によくても、壮犬、成犬と成長するにつれ、逆に質が低下する犬もいます。本当によい秋田犬とは、成犬になるにつれてよくなっていく犬です。むしろ、幼犬から成犬まで一貫してそのよさを際立たせている犬こそ、真に優れた秋田犬といえるでしょう。

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