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迎える心構え1
(令和3年2月24日更新)

 このコーナーでは、初めて秋田犬と暮らしたいと考えている皆さんにとって事前にどのような心構えが必要か、などに触れてみたいと思います。今回は、ご近所さんとの関係性などを論じてみましょう。

 本題に入る前に申し上げておきたいのは、秋田犬と生活をともにするには大なり小なり苦労を伴うということです。無論、小型犬、中型犬にもそれぞれ飼育上のむずかしさはありますが、青年期(生後6カ月〜2年)以降の秋田犬は小型、中型犬に比べて体が大きく力もかなり強いため、「ちょっと飼ってみるか」といった安易な気持ちで迎えられる犬種ではありません。

 古めかしい表現をあえて使うなら、秋田犬と暮らすなら「腹をくくる」必要があります。もしそれができないなら、やがて「自分が思い描いていたのと違う」となりかねませんので、秋田犬を家族の一員にすることを今一度熟慮し直した方がいいかも知れません。

 大変なのに、なぜ秋田犬と暮らすのか。理由は明快です。秋田犬は、飼育上の苦労に見合うだけの、または、それ以上の幸福や"ドラマ"を家族にもたらしてくれるからです。「うちのラブラドールだってそうだよ」「うちのシェパードだってそうよ」とおっしゃる方もいるでしょう。もちろん、そのとおりです。ただ、他犬種にもそれぞれ固有の特性があるように、独特の特性を有する秋田犬についてのみ、この場では論じているとご承知おきください。

 当クラブは平成12年(2000年)から国内外の多くの皆さんに秋田犬をお迎えいただいておりますが、迎えた後に後悔した方は皆無であると自負しており、それぞれの思いとともに秋田犬を愛し、慈しみ、どなたも心から満足しておられると信じています。

 その中で三重県にお住いのAさんは「R(愛犬の名前の頭文字)のおかげで、家族みんなが本当に幸福な日々を過ごしている。彼がこの世からいなくなるなど、想像すらできない」と、かつておっしゃっていました。愛情が深ければ深いほど、別れの悲しみもまた一層深いものとなります。

 令和2年、元気に朝の食餌を摂り散歩を楽しんだRは、何の前触れもなく15年と数カ月の生涯を閉じました。それから半年ほど過ぎた元日、Aさんの年賀状には「いまだに、悲しみがいえません」と書かれていました。別れが唐突であればあるほど、何倍も深い悲しみに見舞われます。秋田犬を家族の一員に迎えられる皆さんは、「迎える」と決めた時点ですでに、亡くした後の悲しみがいかばかりのものか、思い描いておく必要があるでしょう。いわゆる「心の準備」です。

 さて、「向こう三軒両隣」という表現がありますが、ご近所さんとの関係が良好かどうか、険悪だったり、いがみあったりしていないか。秋田犬を迎えるにあたり、これはとても重要です。

 多くの方は生後50-70日の子犬を迎えますが、親から引き離されたばかり子の中には三日三晩鳴き明かす子がいます。涙を流さないまでも、それは「鳴く」というより、「泣く」と形容する方がふさわしいかも知れません。母親やきょうだいたちから引き離され、まったく知らない世界に連れて来られ、不安で、寂しくてたまらないのです。初めて迎えられた方にとって、その鳴き声は最初の"試練"となり、夜中などは寝かせてくれないことさえあります。叱りつけたとしても、その意味すら判らないため、鳴きやみません。初日からまったく鳴かない子もいますが、むしろそれは少数派でしょう。

 そうした最初の"試練"にめげてしまうかも知れませんし、あまりにも鳴きやまないため、秋田犬を迎えたことを後悔してしまうかも知れません。そのような状況に直面した際、「夜はどなたかの姿の見えるようにして寝てあげてください。少しは不安や寂しさが紛れ、鳴きやむ子もいます」と、当クラブは助言させていただいております。

 家の造りや住宅密集地であるなどの立地状況によっては、迎えた子の鳴き声が隣近所に聞こえる可能性があります。そこで大切なのが、「向こう三軒両隣」とのふだんからのつきあいです。ご近所さんとのつきあいが希薄になりがちなごのご時世ですから、お向かいさん、そしてお隣さんと一切、会話は無論、あいさつすらしないという方もいるかも知れません。

 喧嘩やいがみあうほどではないにしろ、近所づきあいがまったくないと、本来なら子犬の鳴き声ひとつでも大目にみてもらえるのに、無言のまま保健所や市町村の役所に"騒音"として相談されてしまうことすらあります。そうなると、保健所や行政による指導が入り、最悪の場合、せっかく迎えた子との生活を断念せざるを得なくなる可能性も出てきます。また、隣近所から直接抗議されるかも知れません。

 秋田犬発祥地の秋田県大館市にも、近所とトラブル続きで保健所にたびたび苦情を申し立てられているにもかかわらず、コミュニケーションの努力をせぬまま飼育を続けているベテランがかつており、最後は飼育をあきらめることになりました。こうした状況は最悪で、社会的に秋田犬のイメージをも損ねます。

 理解や協力を得る意味でも、最低限、「向こう三軒両隣」と良好な関係を築いておく必要があり、迎えた秋田犬がやがて近所の人気者になるぐらいの関係性が理想の姿です。近所とは仲良くできないし、その気もない、という方ははっきり申し上げて秋田犬との暮らしは向かない、と断言させていただきます。

 秋田犬は、迎えられたご家族の皆さんとともに呼吸をし、生きています。当然、喜怒哀楽もあり、声を発します。しつけの仕方を誤ると、吠え癖がつくかも知れません。そうした場合、隣近所とまったく交流がない、またはいがみあうなどの関係にあると、いずれ最悪の事態に陥る可能性があります。これは秋田犬に限ったことではなく、犬を家族の一員とする皆さんすべてに言えることでしょう。

 もし、隣近所との関係がとても希薄または険悪にもかかわらず、秋田犬と生活を共にしたい皆さんは、事前にこれを改善しておくことをお奨めいたします。少なくともお向かいさんとお隣さんには「今度、秋田犬を迎えますので、よろしくお願いします」といったあいさつを事前にしておければ、それだけでも大きな効果があります。もしかすれば「秋田犬ですか、いいですね」などと、迎える前から会話が弾むかも知れません。

 秋田犬の存在が鎹(かすがい)となって希薄だった隣近所と交流が深まる場合もありますが、これまで一切コミュニケーションがなかった状態では、最初からそうした期待は持たない方がよろしいかと思います。「うちで飼う犬だし。近所なんて関係ない」という気持ちは、くれぐれも持たないでいただきたいものです。

 データは少し古いですが、平成22年に内閣府が行った動物愛護に関する世論調査で興味深い結果が示されていますので、このコーナーの締めくくりとしてご紹介しましょう。ペットといえば犬と猫が代表格ですが、ペット飼育が「嫌いなほう」と回答した人が全体の22%、「大嫌い」と答えた人が3%、これを合わせると25%、つまり全回答者の4人に1人がペットの飼育を否定的なものととらえていることが判ります。

 近所の住民か否かにかかわらず、こうした否定的な人たちは秋田犬を含むペットを飼育している皆さんを好感を持って受けとめてはくれないことを、事前に理解しておく必要があります。

 ひらたくいえば、国民の4人に1人は犬猫などの動物が嫌いで、それを飼育している人も好きにはなれない、という現実を無視できません。ただ、せっかく秋田犬を家族の一員に迎えるなら、そうした人たちにも愛犬が愛されるよう努力を惜しまないでいただきたい。それが、当クラブの切なる願いです。

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