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どんな動物にも言えることかも知れませんが、秋田犬の誕生も予想外の連続です。例えば、母親のお腹の膨らみ具合をみて、ベテランは長年の経験から「5頭ぐらいのようだ」と推察したりしますが、実際にはもっと多かったり少なかったりで、外れることは往々にしてあります。また、オス、メスの数がバランスよく生まれることを期待しても、すべてオスだったり、すべてメスだったりということも十分にあり得ます。子の色は、血統を熟知していればほぼ予定どおり生まれますが、赤と赤を交配しても白の子の方が多く産まれたなど、「産まれてみないことには分からない」のが出産です。生命誕生という観点から、このコーナーでは1頭の子にスポットを当て、少しだけ成長の様子を写真で紹介してみましょう。
今回の"主役"の子の母親です。これは出産の約5時間前。ベテランオーナーは乳房の毛の抜け具合などから「ここ2、3日かな」などと予想しますが、なかなか誕生予定日どおりにはいかないこともあり、陣痛はいきなりくることが比較的多いといえるでしょう。この母親も撮影した時点ではいつもと変わらず、尾を振って愛嬌を振りまいていましたが、その日の夕方に出産を開始し、夜のうちに無事に終えました。 犬だから何もしなくても自力で産み終えるだろうと考える人が多いかも知れませんが、1頭の命も失われることなく無事に完了するには、オーナーの側に長年の経験と勘、そして深い愛情が要求されます。特に、寒い季節の出産では1頭生まれるごとにすぐに子犬をドライヤーで乾かし、ふわふわの毛にしてあげる配慮が必要です。 また、産まれたての子が母親の体の下で窒息死することもありますので、出産が深夜、朝に及ぶ場合は、つきっきりで見守ります。稀に仮死状態で産まれてくる子もおり、人工呼吸をして蘇生させます。母体から外へ出ることができずにいる子に対しては、へその緒がついたまま、直接手で出してあげたりもします。 ひとつの命を誕生させる行為は、「壮絶」と形容し得るほどの作業なのです。 |