BANNER0808.JPG - 66,727BYTES

「通」な呼び名(1)

 「秋保」と書いて「あきほ」と読めば、日本を代表する秋田犬社団法人の短縮名。海外のベテランオーナーなどとやり取りをしても、ごく普通に「Akiho」という単語が飛び出す。"Teach me Akiho's number about the Akitainu."は、「その秋田犬の秋保(登録)番号を教えて下さい」となる。さながら、"Akiho"という呼び名を知っている自分は秋田犬の通だ、とでも言いたげだ。

 秋田県以外の他都道府県でも「秋保」という呼び名は、会員などの間で一般的に使われているのであろう。だが、秋田犬発祥地、かつ社団法人の本部がある大館市では「秋保」という呼び名が熟練者の口から出ることはあまりない。同法人の顔ともいえる重鎮をはじめ、周囲の役員、会員らは「秋保」とは呼ばず「保存会」を好んで使う。

 前述の重鎮とは年に何度も顔を合わせるが、「秋保」という言い回しはほとんど聞いたことがないし、血統書についても「秋保番号」とは言わず、「登録番号」と表現する。全国にはいろいろな保存会があるため、ただ「保存会」と言われても一般にはわかりにくいのだが、秋田犬のベテランオーナーたちの会話では一も二もなく「保存会」といえば対象は一つなのである。

 確かに、社団法人が発行する秋田犬血統書には「秋保」と大きく記されている。だが、この土地のベテランたちは頑固なまでに「秋保」を使わない。この点は非常に興味深く、むしろ「保存会」が通な呼び名であると思わせる。それが通であることを知っている会員は、当地に限らず、あるいは全国にもかなりいるのかも知れない。一般的な呼び名と通な呼び名が、いろいろなジャンルにある。この地ではまぎれもなく、「保存会」が通な呼び方だ。

HOME