BANNER0808.JPG - 66,727BYTES

秋田犬の食餌

 ドッグフードに対する秋田犬飼育者の考え方は、2極分化している。一方は、価格の安さにのみこだわる飼育者。これは、ホームセンターなどで安価な銘柄に特定して購入するケースが多い。無論、愛犬が健康で長生きしてほしいと願っているが、予算を重視し、一定の金額以上の製品は購入しない傾向がみられる。一方は、ともに暮らす秋田犬の健康と長寿をより強く意識し、たとえ高価であろうとも本当に良い物だけを選ぶ努力を惜しまぬ飼育者。

 また、与え方にも2つのタイプがあるようだ。一方は、ドッグフードの袋から取り出して何も手を加えず、そのまま与える飼育者。もう一方は、ドッグフードを食べやすく、消化しやすくするためにぬるま湯である程度軟らかくしてやり、缶詰や独自に作ったものなどを加えることによって食餌のバリエーションを広げる飼育者。

 どのようなドッグフードを選ぶか、かつ、どのような与え方をするかがその犬の健康や疾病、寿命の長短に影響を与えるのはいうまでもない。選び方、与え方のいずれがより重要かといえば、選び方であろう。よく聞くのが、本当に満足のいくドッグフードに未だ出会えずにいる、との声。

 どんな銘柄を使用して犬の調子がよくないのかを訊ねると、秋田犬に限って論ずれば欧米製の某ドッグフードに行き着く。皮肉なことに、秋田犬飼育者にもこの銘柄の使用者はきわめて多い。

 全国で飼育されている愛犬は洋犬の比率が圧倒的に高いという実情、つまり最大公約数の顧客のニーズに沿うために、洋犬向きのドッグフードがシェアのほとんどを占めている。そうした餌を日本犬の秋田犬にも与えているのだから、納得のいく健康状態に至らないのはむしろ当然といえよう。

 前述の欧米製も物が悪いのではなく、典型的な洋犬向きのドッグフードであることを理解せずに高いコストをかけて購入し、秋田犬に与えているがゆえにかんばしくない状態をみずから作っている。

 さらに1点、気になるのは「獣医から購入したドッグフードを与えているのだが、うちの秋田犬の状態は一向によくならない」という声が少なくないこと。この実態を、どう解釈すればいいのか。みずからドッグフードを販売する獣医の大半は「これは自信を持ってお薦めできますので、使ってみてください」と太鼓判を押す。多くの人は獣医の推奨品を信頼し、多少高くても購入する。

 実際に購入者が使ってどうなのかを獣医は厳密に検証する必要があるし、それによって「好ましくないドッグフード」との結論に至ったら、即座に販売を中止するのが誠意ある姿勢、モラルというものだ。全国の多くの獣医はきちんと検証しながら薦めているのであろうが、疑問符をつけたくなるケースも見受けられる、と聞く。

 ここでドッグフードのメーカーや販売店に誤解していただきたくないのは、一般に出回っているドッグフードは「悪い品」と断じているわけではないということである。より良い物を世に送り出そうと、懸命に試験研究を重ねていることも、十分に理解できる。努力して作り上げた銘柄がすべての犬種に合うかといえば、メーカーサイドも胸を張れないであろうし、一方で日本犬専用のドッグフードもきちんと販売されている。

 ただ、秋田犬に与えている方々の少なからずが現状に満足していない点はメーカーも重視すべきだし、テレビのCMなどを通じて爆発的なヒットを飛ばしている銘柄だからといって秋田犬にとって良品とは限らぬことを、一層真摯に受けとめるべきである。ドッグフードは単なる餌ではなく、家族と犬をつなぐ強固な橋のごとき役割を果たさなくてはならないのだから。

HOME