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置き去りの犬

 知り合いの秋田犬団体役員に、残念な事実を知らされた。5月3日に秋田県大館市で開かれる本部展で入賞し損ねた犬を、置き去りにする不埒なオーナーが時おりいるという。その中には、保健所に捕獲され、安楽死の末路を迎えるケースもあろう。

 そうしたオーナーは本部展で勝つためだけに秋田犬を飼育し、負ければ用なし、という感覚で捨てていくのだろうか。犬は飼育者を選べない。運悪くとんでもない者に、勝負の道具として飼育された当の犬たちこそ不憫だ。

 確かに、顔や体つきだけでは、よほど全国に知られる犬でもない限り、「これはあの人の○○号だ」と断定できない。大館市に本部を置く秋田犬組織は、団体の名を汚した会員に対しては除名や会員権停止処分など厳しい姿勢で対処する方針ながら、前述のように置き去りにされた犬の所有者を特定するのはむずかしいため、それが原因で処分された話は聞いたことがない。

 とはいえ、徹底的に調べれば判ることではある。本部展後に捨てられた秋田犬を撮影し、各支部に写真を配布することで「もしかして、あの人の○○号ではないか。本部展に連れて行った後、見ていないし」という具合に、情報が寄せられる可能性もある。判明すれば、秋田犬の名誉を汚したことで、厳しい措置が講じられることになろう。"摘発"された前例がないゆえに、平気で置き去りにするのかも知れない。

 勝つために秋田犬を飼育するのか。家族の一員として暮らしているのか。秋田犬の「勝負師」は全国に少なからず存在する。勝負にのみこだわる人もいる。犬に対する惜しみない愛情と、犬との一心同体の努力によって初めて勝利を手にできることを忘れている人も、中にはおろう。そうした人、つまりみずからの眼を曇らせてしまった人が「こんな犬はいらん」と、河川敷や林の中などに捨てていくのだろう。

 平成18年6月1日に改正・動物愛護管理法が施行され、かなりの月日が経過した。現在は、犬を捨てる悪質者が判明した場合は、刑事告発もあり得る。数多くの犬種の中で忠犬ハチ公に代表される秋田犬を選び、ともに暮らしているのだから、入賞できなかったからといって見捨てるのではなく、深い愛情を注ぎ続けてほしい。失われぬ愛情こそが、犬にとっての、自分にとっての、幸福といえるのではなかろうか。

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