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闇の中の闘い

 下の写真をご覧いただきたい。展覧会での上位入賞に情熱を燃やす熟練者なら、芸術の域に達している虎であることをお分かりいただけよう。顔、色、構成、骨格のどれを取っても欠点を探すのがむずかしいほどだ。手塩にかけ、オーナーは彼をここまで作り上げた。

 ある日、彼の心に変化が生じた。降って湧いたような変化。オーナーの眉間に苦悩の皺が、深く刻み込まれた。このままでは、展覧会で勝利を手にすることなどできない。「何がお前をそうさせたのか」。それには答えず、彼は何事もなかったかのように田んぼのあぜ道を疾走した。全身から溢れ出る鋼のごとき力強さ。

 やがて本道に出た。その刹那、彼はみずからの価値を、みずからの意志で捨てた。たらりと尾を垂れ、巻こうとしないのだ。なんの車道など。ずっとこれまで力強く闊歩していたではないか。何が彼を気弱にさせてしまったのか。オーナーが、自問する。「なぜだ」。彼自身がこれを克服せぬ限り、未来に栄光はない。闇をまさぐるかのごとく、"ふたり"の闘いが続いた。それから1年後、オーナーの献身的な愛情で彼は見事に復活を遂げ、展覧会で見事な雄姿を披露した。

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