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災害から護るために

 地球温暖化の影響もあり、日本は数十年前とは比較にならないほど大雨によって甚大な被害を受けやすくなっていると言えるでしょう。発達した雨雲が線上に次々と発生し、非常に強い雨を長時間にわたって降らせる「線上降水帯」という、以前なら耳慣れない気象用語もすっかり定着しました。

 自然災害は台風、洪水による風水害や地震、竜巻、海岸周囲では津波、火山周辺では火砕流など多岐にわたる中、このコーナーでは秋田犬と暮らす皆さんが災害を想定した事前準備、そして実際に直面した場合の対応について考察してみたいと思います。

 「備えあれば患い(憂い)なし」。万一に備えてあらかじめ準備をしておけば事が起きてもうろたえずに済む、という非常に分かりやすい諺です。災害を想定した事前準備も、まさにこれに当てはまるでしょう。飼い主はもとより愛犬に役立つ防災グッズを事前に準備し、使い方をマスターしておくことも大切です。

 ここから先は、愛犬を連れて避難所に逃れないと生命が脅かされる最悪の事態を想定し、話を進めていきます。事前準備としてまず必要なのは、自治体(市区町村)が定めている最寄りの避難所に愛犬を受け入れてくれる臨時の飼育場所を確保しているかどうかを、担当窓口に平時に電話などで確認しておくことです。

 地域防災計画の中に避難所でのペット受け入れガイドラインを作成している自治体も増えてはいますが、ペット同伴での避難を考慮していない自治体はまだあるかも知れません。ペット受け入れのための臨時飼育場所を確保しているか否かは、愛犬の命にもかかわることですので最初に確認したいところです。

 臨時飼育場所を確保していると仮定した場合、その飼育場所は「別居型」と「同居型」の2種類に分けられます。別居型は学校や体育館、公民館、町内会館などの避難場所から少し離れた場所にテントを備えつけたり、建物の渡り廊下、屋根付きの駐輪場などに臨時飼育場所を設置する例が多くみられます。

 一方、同居型は避難施設内ながらも、ほかの避難者と異なる部屋(別室)で愛犬とともに過ごす避難場所が一般的です。避難施設が小規模の場合は、同居型が不可能なこともあり得ます。

 自治体がペットの臨時飼育場所をそもそも想定していない場合、事態は非常にむずかしくなり、愛犬を自宅に残したまま避難所に行かざるを得ないことや、愛犬同伴でマイカーで避難し、災害の危機が去るまで車内を臨時飼育場所にしなければならないことも考慮する必要があります。

 それでも、大規模災害が発生した場合は自治体だけではなく地元の獣医師会や動物愛護愛護団体などによる現地動物救護本部も開設されますので、完全ではないにしろ可能な限りペットの命を護る対応がなされると考えられます。

 ただ、過去になかったほどの最大級の災害に見舞われた場合、愛犬を連れて逃げることができないなど、どうしても家族だけでは対応できない事態も起こり得ます。そこで大切なのが、平時から愛犬を通じて近所の人たちと良好な人間関係を構築しておくことです。どんなことで"お隣さん、お向かいさん"のお世話になるか、分かりません。

 丁寧な近所づきあいをしておけば、一時預かり所になってくれる可能性や、代わりに避難所に愛犬を連れて行ってくれることも望めるかも知れません。犬の鳴き声や悪臭などでいつも迷惑をかけ、近所から良く見られていなければ、絶対といっていいほど協力は得られないと考えるべきでしょう。

 また、近隣の飼育者同士で「飼い主の会」のようなグループをつくって災害時の役割分担を決めるなど、相互協力しあえる体制を事前に構築しておくことも求められます。

 秋田犬は大型犬ですので、ケージやバリケンに入れるなどして災害時にも比較的容易に持ち運べる小型犬と違い、一連の避難作業も難易度が高くなると認識しておくべきです。

 また、秋田犬に限らず避難所で長時間無駄吠えをしたり、鳴いたりする犬も少なからずおります。一般の避難者と、ある程度の距離を取っているとはいえ、とりわけ犬嫌いの人や苦手な人はたたみかけるような犬の声に不快感やストレスを感じたりしないとも限りません。このため、ケージなどに一定時間待機させても鳴いたりしないよう、ふだんから躾や訓練をしておく必要もあります。

 このように、大規模災害を想定して事前にやるべきことは少なくありません。秋田犬を家族の一員になさっている皆さんは、常に「備えあれば患い(憂い)なし」の心構えで愛犬と向きあっていると信じております。

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