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 どう勝つか
 展覧会で勝つには、秋田犬への限りない愛情と犬そのものが優れているのは必要不可欠ですが、それ以外に求められる技術があります。熟練オーナーもそれぞれ、独自のノーハウを持っています。そこでこのコーナーでは、ある支部展覧会での写真をもとに、配慮すべき点などをいくつかピックアップしてみましょう。
 展覧会に出陳するための会場への輸送形態は、支部展ならば多くがマイカー、本部展などは遠路はるばる空輸する場合もありますが、マイカーで数百キロ移動することも珍しくありません。

 疲労がピークに達していたり、乗り物酔いしている犬は、いざ出番というときにはうまく立ってくれなかったりしますので、移動に際してはどうすれば犬の疲労や乗り物酔いを最低限に抑えられるかを、常に考えてあげなくてはなりません。→

 この場合は、大型犬用のケージに入れて、ハッチバック車での移動です。片道約2時間半。展覧会場へのルート選びも大事です。カーブや坂の登り下りが多いルートは、車酔いで吐いたりします。そうなると"ステージ"ではどうしても精彩を欠いてしまいます。多少遠まわりでも、平坦で直線の多いルートを選びたいものです。
 会場に着きました。オーナーにもよりますが、写真のオーナーさんは飼育歴50年以上の超ベテランですので、到着後も万全の仕上げに余念がありません。まず、バケツにきれいな水を汲み、タオルで丹念に拭いてあげます。

 それから、全身くまなくブラッシングをしてあげます。毛が抜ける時期にきていたら、ブラッシングの最中に毛が抜けても気にする必要はありません。抜け毛が体に付着していることの方が外見上、マイナスです。きれいにして、ブラッシングを施してやることで、犬の方も気分的にリフレッシュします。

 会場に着くや、周囲を積極的に歩かせるオーナーもおりますが、写真のオーナーさんはドライブでの疲労回復を最優先し、犬を入れてきたケージを日陰に置き、その中で休ませます。出番まで、外に出ることはありません。 (注:犬の頭が白く写っていますが、これは光の加減でそうなったものです)

 さあ、出番です。審査すべき個所は非常に多くありますが、審査員は何頭もの犬を速やかに審査しなくてはならない関係上、基本的にはその犬の最も優れている点と最も劣っている点を中心に評価していきます。

 展覧会経験がまったくない、あるいは浅いオーナーは、ただ綱を持つぐらいしかできませんが、ハンドリングには高い技術が求められます。その技術に長けているハンドラーは、その犬本来の価値以上に高く見せる技術も心得ています。無論、勝負は犬そのものの完成度や当日の状態に大きく左右され、長旅の疲れや乗り物酔いなどが原因でうまく立たず、予想外に順位を下げる場合もあります。

 土俵の中で相撲でも取りそうな光景ですね。犬を適切に評価できるかどうか。審査員の力量が試されます。他会場で同じ犬を審査したことのある審査員は、前回と比べてどうか、という点まで評価の参考にすることもあります。

 前回と比べて順位が下がったとしたら、審査員はなぜそうなのかを明確に答える力量を備えていなくてはなりません。多くの場をこなし、多くの秋田犬を見て研鑚を積んでいる審査員ほど、適切な審査ができます。→

 第一審査(団体審査)、第二審査(総合審査)が終わり、順位が決まりました。成犬牡(オス)に出陳した写真の犬は、支部展の最高峰、特優1席でした。

 ちなみに、特優1席は犬の完成期を迎える成犬の部でのみ与えられる賞です。本部展の名誉章を勝ち取るための、登竜門に匹敵する賞といえるでしょう。この犬は珍しくややナーバスになっていましたが、ずば抜けて高いハンドリング技術を持つオーナーさんですので、最高の立ち姿を見せる技でも勝負します。

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