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秋田、青森両県の県境に位置する矢立峠。同峠の国道7号を青森県側から走行すると、秋田県大館市の入口を示す国土交通省の看板が頭上に見える。大館市を代表するものには天然記念物秋田犬、同比内鶏、比内鶏をベースに高級食材として開発された比内地鶏、秋田杉を材料とする曲げわっぱ、きりたんぽ鍋などを列挙できるが、大館を最もイメージしやすいということで、看板に秋田犬を起用(上の写真)したと推察できる。 これまでの人生の中で、「数え切れぬ」と表現しても過言ではないほど矢立峠を通過した。いつ掲げられたのかは定かではないが、同峠を通るたびに強烈とも言えるインパクトで目に飛び込んでくるのが、看板の秋田犬親子である。赤毛と白毛の子が、母犬から乳をもらっている。秋田犬を撮影する際、ここまで成長した子犬への授乳はあまりお目にかかれぬ構図。まして、母犬が寝転んで与えているのではなく直立不動の姿や、犬舎内ではなく屋外が面白い風情を醸している。親子の情愛が豊かに表現されているとして、選定にあたった職員らはこの写真を採用したのだろう。 青森県からの帰り、すっかり色あせて写真とも絵画とも判別しにくくなったこの"秋田犬"を目にすると、なぜかほっとする。比内鶏や曲げわっぱの媒体を掲載しても、同様の感慨は恐らく得られまい。大館にはやはり、秋田犬が似つかわしいのだろう。 |