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繊細な関節

 秋田犬の暮らしは、二つに大別されるでしょう。一つは純然たるペットとしての生活、一つは展覧会という勝負の世界に挑戦する暮らしです。ともに、飼育者にとって家族の一員であることに変わりはありませんが、それぞれの管理、飼育方法は大きく異なります。

 それとは関係なく、成長の過程でベテラン、素人を問わず、管理面で失敗しがちな最たる点は何でしょうか。答えは、脚です。前脚は肩から垂直に伸びなくてはなりませんが、扇状に開いてしまった脚は少なからず見られます。

 また、後脚も腰から垂直に伸びなくてはならないのに対し、X状にクロスしているように見える脚が意外に多いのです。前脚の場合は、関節の異常ではなく成長過程で胸骨端を広くできなかった、つまり胸が薄いために前脚で体重を支えきれず扇状に開いてしまう例もあります。肥満の際も、その傾向を確認できます。

 関節異常の原因の多くは、子犬時の管理の失敗です。特に後脚は、管理方法を誤ると下のX線写真のように関節がきちんと組まない状態となり、ひどい場合は成長しても軸がブレたような歩き方をします。無論、展覧会では上位入賞など期待すべくもありません。素人の飼育者は関節が健全なのか、異常なのかを、歩き方がよほど不自然でない限り、その犬の生涯にわたって判別できません。素人が外見から判断するのは、それほどむずかしいのです。

 経験豊かなベテランは、適切な管理と運動によって生後150日までにこれを矯正できる可能性があります。「150日を超えてしまうと、矯正できる確率は著しく低くなる」と、当地大館市の大ベテラン。その大ベテランは、150日までの間に矯正できる全国でも数少ない存在で、その方法はきわめて有効なものです。

 長い試行錯誤の末に考案した「門外不出」の方法ですので、このコーナーで説明はできませんが、一つだけヒントを与えられるとすれば、生後150日までの運動や散歩の際、引き綱を使用するかどうかということです。この点についてのお問い合わせは、ご遠慮願います。ただ、当クラブから子犬を迎えられた皆さんに対しては、必要に応じて運動方法などのアドバイスもしております。

 なお、獣医師の中には「生後6カ月までは散歩をさせないで下さい」と指導する人がいます。洋犬など別犬種はそれで良いのかも知れませんが、秋田犬の疾病などにも造詣が深い当地の研究家は、そうした獣医師とはまったく逆の考え方です。路面で、別の犬による便やその痕跡の有無に注意を凝らし、それを踏ませないようにする。踏んでしまうと、うっかり回虫の卵を取り込んでしまうリスクがあるためです。

 それさえ気をつければ、むしろ生後60日ぐらいから朝夕10分程度ずつ散歩をさせるべき、というのが研究家の結論です。その間に、いろいろな人や通行車両などの存在を知り、社会性を養います。併行して、度胸もつきます。散歩開始を生後6カ月以降にすると、社会性を養わせるのに苦労する場合があるほか、臆病な性格のまま成長する可能性も出てきます。クルマに同乗させても、慣れるのに時間がかかったりします。

 前述の獣医師の論拠は「ヘタに散歩などさせずに6カ月間、"無菌"状態で育てるべき」ということのようですが、秋田犬についていえば、そうすることによって支払わなくてはならぬ代償も少なからずあることを肝に銘じるべきでしょう。「獣医師の指導が最優先ですので、私はそうします」と全幅の信頼を置いている方は、そうなさってください。

 関節の話で締めくくりますと、秋田犬の子の関節は股関節を含めて非常にデリケートです。生後150日までが最も管理のむずかしい時期、と心得ましょう。

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後脚の関節が正常に組んでいない秋田犬の子のX線写真

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立ち姿や歩く姿で関節異常の有無が分かります
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