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数多く子犬を作出してきた熟練者はおおむね、子犬が母犬の胎内から生まれ落ちて間もなく、その子の毛の長さが標準か長毛かの判別がつきます。ただ、稀に60日経過しても結論を出しにくい犬がおります。 青森県で産声をあげた下の画像の子について、青森屈指のベテランや作出者を含む4人の秋田犬熟練者が長毛犬か否かについて経験値に基づく持論を示しました。青森屈指のベテランは「毛吹き(毛の量)が、とても良い犬だ。この犬がモグ(秋田、青森両県で使われる長毛犬に対する方言)なはずがない」と絶対的な自信をうかがわせました。 これに対し、作出者は「どちらに転ぶか、まったく見当がつかない」、別のベテランは「毛は柔らかいが、最初の換毛を終えるまで判断がつかない」との見解を示しました。そして、当クラブ事務局は「毛吹きが良いようにも見えるが、換毛を待たなくてもそろそろ長毛を決定づける変化が現れるのではないか」との見方を示しました。そこで、当クラブ犬舎に半月置いて経過を観察することになりました。 一般に長毛は、生まれ落ちて間もなく毛質が天然パーマ状態であることに気づかされます。いわゆる、ちぢれっ毛です。再度、下の画像をご覧ください。この犬は果たして毛吹きが良いのか、長毛なのか。もし長毛ではなくとても毛吹きに良い犬だとしたら、鉢(頭部)が大きく、顔の造りが良く、眼に力があり、構成も良く、まさにハイグレード犬です。前述の、青森屈指のベテランなどは「すごい犬が生まれた」と、犬仲間に触れまわったほどです。 では、半月観察した当クラブの見解を述べてみましょう。毛質は天然パーマであるような、ないような、微妙です。体は天然パーマ然としていますが、顔や頭部はそれほどでもありません。 しかし、毛はとても柔らかく密度が高いです。また、背中の毛をつまんでみると、そのまま持ちあげられるほどの長さを感じます。この段階で、長毛である確率が一気に高まります。 次に、犬の足指をご覧ください。撮影時点では、指間の線がまだ見えます。しかし、日を重ねるうちにこの線はまったくといっていいほど、見えなくなりました。そして、肛門。撮影した時点では見えていたのですが、これも徐々に周囲の毛で隠れてしまいました。スタンダードな毛の長さの秋田犬は、尾を下げた状態にでもならない限り、肛門は常に丸見えです。 秋田犬、とりわけ子犬は一定期間生活をともにしてみると、目に見えて変化していきます。長毛かどうか判断しにくい犬も徐々に"正解"が示されます。全身長毛の「全長毛」、顔など一部が長毛の「半長毛」といった"分類"もありますが、下の画像の子のようにベテランたちが額を突き合わせても長毛の可否を判別しにくい犬もいます。子犬時に「長毛」と決めつけていた犬が大化けし、本部展(全国大会)で頂点を極める例すらあります。それほど秋田犬は奥が深く、見極めがむずかしい、といえるでしょう。 (2018年12月19日) |