ワンポイント・アドバイス 最近は、当クラブから旅立った秋田犬の新オーナーの皆さんの中にも、支部展や総支部展、本部展の見学を通じ、「いつかは展覧会にも挑戦してみたい」という意欲を持たれる方が出てきています。 さて、上の写真をご覧ください。展覧会での審査で減点される重要な課題点を、2つ見つけることができます。まず1点。耳はいかなる時も、きちんと正面を向いていなければなりません。上の写真では、完全に横を向いています。そうなった原因としていくつか挙げられるのですが、最も考えられるのは引き綱を持っているハンドラーがかなり緊張しているため、緊張がそのまま犬に伝わっているのです。 もちろん、展覧会初出陳という緊張もあるでしょう。 初出陳であっても、極力緊張を緩和してやる方法はあります。上の写真のようにあまり強く綱を引き上げずに、引き上げたらフッと力を抜いてあげください。そうすることによって、犬の緊張は緩みます。場数をこなしたハンドラーでも、犬をできるだけ審査員によく見せようとして、あれでは犬が苦しいよ、と思いたくなるぐらい綱を引き上げる方がおりますが、「あれではだめ。1度引き上げた後、フッと力を抜いてあげるんだよ。そうすれば、犬の耳も正面を向き、自然体になる」と元名審査員はいいます。ハンドラーの皆さんは、引き綱を持った時、愛犬の耳がどちらを向いているかをきちんと確認し、横を向いていたら、「緊張している」と瞬時に判断してください。 第2点。展覧会では、立ち方一つで勝敗に少なからず影響を与えます。再度、上の写真をご覧ください。前脚が真っ直ぐではなく脚立(きゃたつ)のように開いていますね。上位入賞する犬の脚は、このようには開きません。 ではなぜ、脚立状態になるのか。大きく分けて2つの理由が挙げられます。まず、運動不足でウエイトが重すぎる場合。トレーニングによって脂肪を減らし、代わりに筋力をアップさせます。そうすることで、一見して「これがあの犬?」と驚くぐらい、外見が違ってきます。 もう1つの理由は、秋田犬を美しく見せるための立たせ方の基本をまだマスターしていないことが挙げられます。順番としては、まずシェイプアップし、体が引き締まったら、いかにすれば脚が垂直になるかを愛犬に接しながら研究してみてください。 大抵の場合、肉体を絞り込むことによってこの問題は解決されますが、癖で脚立状態になる場合は特別な運動方法を学ぶ必要があります。なお、子犬の時は過剰に走らせる運動は絶対に禁物です。体がきちんとできあがっていないため、過剰に走らせると関節をだめにし、展覧会では使いものにならなくなります。 秋田犬には、約120項目にもわたる審査個所があります。それほど多いと、全身をくまなく見なくてはならない理屈になります。しかし、短時間のうち多くの犬に優劣をつけなくてはならない審査員には、とうていそこまで見る時間も余裕もありません。最も肝心と思われる項目を中心に審査しているのが実情で、秋田犬審査員の試験も80点以上得点しないと合格できないほどハイレベルな中にあってさえ、実際の審査力量には開きがあります。 それほど秋田犬の審査はむずかしいことになりますが、元名審査員はまだ経験の浅い審査員の皆さんに「机上で秋田犬を学ぶのではなく、ふだんからたくさんの秋田犬を見るよう心がけなさい。そうすれば、おのずと審査員としての眼も養われてくる」と、叱咤激励しています。
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