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犬種によって、尾を巻く種類と巻かない種類に大別できるのは、ご承知のとおりです。このうち秋田犬は、力強く巻いていなければ絵になりませんが、四六時中巻いているかといえば、そうではありません。緊張時や体調が芳しくない時など、状況によってだらりと尾を下げることがあります。展覧会慣れしていない犬などは、緊張のあまり、ハンドラーの思いどおりに尾を巻いてくれないこともあります。 さて、ここでは「投げ尾」に少し触れてみましょう。右の写真が典型的な投げ尾の形ですが、巻いているでもない、といって完全にだらりと垂れているでもない、あえて表現するなら巻きそうで巻かない状態といえるでしょう。尾をだらりと垂れたまま展覧会に出陳すると、当然のことながら入賞はおぼつきませんが、投げ尾でも「尾の表現が悪い」との評価で著しく順位を落とします。 だらりと垂れた場合と同様、投げ尾も先天性の場合、後天性で何らかの強い肉体的、精神的ショックを受けた場合、状況によってたまたまそうしているにすぎない場合、に大別できます。先天性の場合は、生まれた直後からその兆候が表れ、成長過程で矯正するのはほとんど不可能か、矯正できるにしてもかなりの苦労を伴うでしょう。また、たまたま投げ尾にするだけで普段は巻いている、というケースはほとんど問題ありませんが、癖でそうすることが多い場合はつとめて巻くよう習慣づける必要があります。 |
ここで論じたいのは、後天性で何らかの強い肉体的、精神的ショックを受けた場合です。ショックの事例としては、虐待された、尾をドアに強くはさんだ、車にひかれそうになった、などさまざまな外的要因が考えられます。尾の中はいくつもの節で構成されており、外傷によってその節のいずれかの部分が損なわれた場合は、触診などで判断できます。
外傷でも矯正できる可能性が高いのは、尾の付け根部分にまだ力強さが温存されている例で、それが子犬の場合は、非常に効果的な矯正法があります。その方法は、ある超熟練オーナーが数十年を費やして開発した丸秘法のため公開できませんが、高い確率で治ります。しかし、外傷性で壮犬、成犬など一定の成長期に達している犬の投げ尾は矯正がむずかしくなり、添え木をあてたり、手術という方法もありますが、手術は失敗すると状態がより悪化するのを覚悟しなければなりません。 外傷性以外の場合では、過保護が理由で臆病に育ってしまったが故に投げ尾となるケースも比較的みられます。この場合は外傷性ほど矯正の難易度は高くないにせよ、飼育者自身が過保護な接し方を改めない限り、矯正はむずかしいかも知れません。別のコーナーでも触れていますが、初めて秋田犬を飼育する方は「愛情を注ぐ」と「溺愛する」を誤認している例が多く見受けられます。過保護に育てれば多くの場合、犬は臆病になり、散歩中、すれ違う犬に吠えたり、一定の場所で動かなくなったりすることがあります。投げ尾も過保護の裏返しである場合が、少なくないのです。 ※このコーナーは、超熟練オーナーからの取材をもとに構築しています。従って、他犬種にはそぐわない場合もありますので、その点を留意して参考になさって下さい。 |