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虎について
 当クラブから秋田犬を購入なさる皆さんは、赤と同様に、虎をお迎えになりたい方も増えております。色については「秋田犬の基本色」で簡単に論じていますが、ここでは虎を家族の一員になさりたい方々のために、もう少し掘り下げてみましょう。

 虎は黒虎、赤虎、霜降り虎が代表的な色合いです。まだ子犬の段階でも、その子がどのタイプの虎なのかを判別するのは容易で、成長するにつれ、その違いがはっきりと出てきます。黒虎は、文字どおり、黒の基調が強い虎をさします。腹部を除く白い部分が純白という例は比較的少なく、腰や背中、頭、首などの部分に微かな赤みがあっても、黒虎に分類できます。これに対して赤虎は、「微かな赤み」ではなく明確に黒と赤の配色となっています。一方、霜降り虎は黒と白によって構成されますが、黒虎は黒の比重が大きいのに対し、霜降り虎は白の比重がぐっと高まるため、虎にしては明度が高い印象を与えます。

 「好み」という観点を別にすれば、虎の色には特に優劣はないようですが、赤虎の場合、本来白くあるべき胸から腹にかけて赤いと品位を損ない、当地では「ゴミ虎」などと呼んで嫌います。一般的に「ゴミ虎」は全身にわたって赤の基調が強いため、容易に見分けがつきます。当地だけではなく、全国の熟練者とも同様の評価でしょう。虎と赤を交配することで意識して赤虎を作る場合もあります。良い顔を作り上げるためです。これは色を捨てて顔を取る場合が多く、抜群の顔をした赤虎が展覧会で他を制することもあります。

 展覧会で虎が上位入賞できるかどうかを大きく左右するのは顔、構成、スケール、毛質、骨量などのほかに、もちろん色バランスも重要です。黒と白がきれいに混じりあうように入り組んでいるのが、優れた虎の色といえます。これに対して、本来混じりあっている部分が露骨に黒い、白いといった場合は、虎としてのグレードが大きく下がり、色バランスが極度に悪いと展覧会で競うのはむずかしいでしょう。

 「これは赤についても言えることだが、虎の場合、虎同士、虎と赤だけを交配し続けると、やがて白い部分がくすんでくる」とは、当地の大ベテランの話。優れた白色を虎に期待するとしたら、頃合いをみて白犬を交配していく必要があるということです。「虎同士で交配し続けているんだが、最近どうもきれいな色が出なくて」という方には参考になることでしょう。といっても、ただ白と虎とを交配すればきれいな虎が生まれるというものでもなく、血統書とじっくり額をつき合わせながら、何代目にどんな色を交配したのかなどを吟味する必要があります。

 さて、当クラブにも「虎がほしいんですが」ではなく、「胡麻がほしいんですが」という要望が稀にあります。簡単に説明すると、虎は虎模様、胡麻は胡麻模様との表現で事足りますが、素人さんの場合、両者の違いに対してほとんど認識がないまま「胡麻がほしいです」という方も少なくないように見受けられます。

 ちなみに、秋田犬発祥地である当地で見ることができるのは虎で、胡麻はほとんど目にすることがありません。恐らくそれは、審査員歴20年、秋田犬飼育歴50年余で当地でもリーダーとして絶大な力を持っている前述の大ベテランの考え方が、地元の秋田犬仲間や後輩たちに浸透しているからではないかと思われます。

 「闘犬だった時代に土佐犬など、さらには別犬種に交配したなどの名残りの色として表れたのが胡麻。一時期、胡麻が流行したが、品位に欠ける色なので高い評価は期待できない」というのが、その方の持論です。そうした背景から、当地で胡麻を見ることはまずありませんし、秋田県内でも稀でしょう。

 当クラブも、胡麻を迎え入れたい方には、はっきりと「虎をどうぞ」とお奨めしていますが、他都道府県の熟練者で熱心に胡麻を飼育、交配している方もいる可能性がありますので、胡麻に対する当クラブとしての見解は差し控えます。ハイグレードな虎をご覧になりたい方は、コラム「これぞ秋田の虎の顔」掲載の虎が参考になることでしょう。

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