わさおの主人が営む焼きイカ店。新たな主人との出会いによって、彼の人生ならぬ"犬生"は一変した。それは、主人とその家族にとっても同様ではないだろうか。全国にこれほど知られるとは誰1人想像しなかっただろうし、まして忠犬ハチ公以来、映画になるなど考えられるはずもない。今も日々多くの観光客が訪れ、主人の店に潤いを与えているわさお。焼きたてのイカは、磯の味がした。
わさおの犬舎からほんの数メートル離れた、海の見える丘にとても小さな墓があった。主人の敷地内であることからすれば、わさおが家族の一員として迎えられる以前に愛された犬と想像できる。観光客の誰も見向きもしないほど小さな小さな墓。手向けた花も枯れていた。しかし、亡くした時の主人の悲しみと思い出がその光景からは伝わってくる。動きは何一つないが、映画のワンシーンのような1コマだった。
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