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わさおの"嫁"、逝く

 わさおの"嫁"、つばきが、令和の世になってわずか5日目の「こどもの日」に永遠(とわ)の旅に出た。わさおにとっては、2017年11月30日に"最愛のお母さん"菊谷節子さんが逝って以来の悲痛。つばきが亡くなって間もない5月8日、所用で青森に出かけていた筆者は、わさおのいる鯵ケ沢まで足を運んでみた。その際撮影した2本の動画を公開する。

 その日、青森には暴風警報が出されていた。カメラを向けると、強い海風を浴びながら身を丸めたわさおは、微動だにしなかった。それはさながら、つばきを亡くして打ちひしがれているように見えるが、海風の気持ちよさに転寝(うたたね)をしているだけのようにも見える。その姿を目の当たりにした、観光客のひとりがぽつりと言った。「動かないね。お嫁さんを亡くして、悲しそう」。

 わさおのそばには、観光客が「わさお」と呼びかけるほどわさおによく似ている、血のつながりのない"娘"「ちょめ」の姿があった。まだ若いちょめも、心なしか元気がないように見えるが、身動き一つしないわさおとは対照的に時おり動きまわる。ちょめは、動くことで悲しみ、寂しさを紛らわせているのだろうか。

 物悲しい"絵"しか撮れない、とあきらめかけていたところ、世話をする女性が店の裏手から姿をあらわし、「わさお、散歩だよ」と告げた。おもむろに立ち上がると、忍び寄る老いに抗(あらが)いでもするかのごとく、わさおは歩き始めた。

 あまりに強い風のためか、老体ゆえか、立ち止まって用を足す動作は緩慢で、今にも転びそうなほど頼りなげに見える。それでも、散歩の喜びのごときものはかろうじて感じ取れる。運命に翻弄されつつも多くの人に愛され、かつての忠犬ハチ公と肩を並べるほど有名になったわさお。彼の姿は、この世にいられる時間はそれほど残されていないのかも知れぬ、と思わせた。     (令和元年5月9日掲載)

★当クラブの動画はYou Tube(ユーチューブ)ではなく独自に公開しているため、サーバーに負荷がかかりすぎると、閲覧不可となることがあります。そうなった場合は、予告なく動画を削除することをご承知おきください。また、サーバーへの負担軽減のため、画質も一定の水準まで落としております。

<動画>

@"嫁"のつばきを亡くした悲しみからか、微動だにせず身を丸めるわさお(右がわさお、左がちょめ)

A散歩をするわさお。老体ゆえか、動きが緩慢だ

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微動だにせず身を丸めるわさお。つばきを亡くした空虚のようにも見えるし、心地よい海風を総身に受けて転寝(うたたね)を
しているだけのようにも見える。いずれなのかは、わさおにしか判らない
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