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秋田犬の体重

 「秋田犬が成長すると、どれぐらいの体重になりますか」という質問を、時おり受けます。関心のある方に、当地の大ベテランの見解をお伝えしましょう。「簡単には答えられないよ」。肩透かしかも知れませんが、それが見解です。

 当然のことながら、そう答えるには理由があります。オスとメスによって体重が異なるのは無論のことですが、毛足が長い犬であるか短い犬であるかによっても、体重に明確な差が出てきます。毛足が長い秋田犬は、ふっくらした風貌とともに重量感がありますし、逆に毛足の短い秋田犬はややスリムで毛足の長い犬に比べていくぶん軽量です。毛足の長短は血統が影響している場合もありますし、住む地方によって異なる場合もあります。

 例えば、北海道など冬が厳寒の地に住むと毛足は長くなりますし、九州など気温が高い地方では毛足が長くなる必要に乏しいため、北の秋田犬に比べて短めの傾向が強まります。また、屋外に設置した犬舎で暮らしているか、エアコンなどが効いた室内で暮らしているかによっても毛足は少なからず変化し、室内犬として暮らす秋田犬は毛足が短いというより、「短毛」になりがちです。「毛足が短い」と「短毛」はそれぞれ異なる意味を有し、展覧会では「短毛」は大きく減点されます。

 一方、スケールの大きな秋田犬であるかそうでないかによって、体重は数キロの幅で異なります。成犬になっても柴犬と秋田犬の中間ほどの大きさにしかならない秋田犬もいます。成長しても秋田犬本来の標準サイズに至らない秋田犬は、栄養状態が悪いのではなく、大抵の場合、大きくならない血統なのです。ダイナミックさも秋田犬の大きな魅力一つなのですが、「うちの秋田犬はなぜか、思い描いたような大きさになりません」という声は比較的多く聞きます。

 このほか、腹の中に回虫を持っている場合は、食べても食べても太らずゲッソリ感があるため、体重は軽めといえます。この場合は、虫下しの処置をして腹の中から完全に回虫を出し、腸内環境を健全な状態にするのが先決です。

 冒頭で「簡単には答えられないよ」と述べましたが、一応の目安はあります。成犬になって、つまり完成期(3歳程度)で、オスが40キロ前後、メスが35キロ前後と憶えておくとよいでしょう。前述のように、いくつかの要素を背景に「前後」という幅が出て来ざるを得ないわけです。仮に45キロぐらいのオスがいたとして、それは毛足が長いのか、あるいはスケールが大きいのか、それとも単なる肥満か、などきちんと分析できなければなりません。つまり、自分の犬の体重のみを知っていても意味をなさないということです。

 換言すれば、体重に必要以上にこだわるのではなく、ともに暮らす秋田犬がどのような体格的、体質的特性を持った犬か、さらにはどのようなコンディションにあるのかを観察する眼を養うことこそ健康で長生きさせるために重要といえます。

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