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ロシアに「ゆめ」
平成24年7月26日公開

 平成24年4月24日生まれの秋田犬の子は同年7月26日、88年前の大正13年1月14日に大館市大子内の斎藤義一氏から東京の上野栄三郎博士のもとへ旅立ったハチ公を再現するかのように、ロシアのプーチン大統領のもとへ大館市比内町中野の畠山正二氏(69)の犬舎を発った。

 「ゆめ」(ロシア語でメチタ)と名づけられた赤毛のメスは、同大統領が犬好きであることや東日本大震災の復興に対する支援へのお礼の気持ちを込め、秋田県が贈った。ロシアとの経済、文化、人的交流促進への期待も込められている。

 手塩にかけて育てた愛犬を「大切に育ててもらいたい」との一心で、大統領への寄贈を快諾した畠山さん。ハチ公クラブ独自の視点で、数枚の写真(いずれも7月25日撮影)を使いながら、旅立ち前の様子を秋田犬ファンの皆さんにご紹介したい。

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 「ゆめ」とはほぼ90日、生活をともにした。まだ、幼いのに初めて綱をつけたら展覧会場よろしく、堂々たる立ち姿を披露した。「娘を送り出すような寂しさがあるが、元気に育ってくれたらうれしい」。作出者は誰しも、暮らす日数が長くなればなるほど、子犬への情が増す。

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 「ゆめ」を含む4頭の子犬たちを育て、まだやつれた外見の母犬「優姫」。立派な秋田犬の作出や管理方法などを指導してきた嘉成良男氏(大館市)が、畠山さんに託した大切な犬だ。
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 わが子との別れが近いことを察したのだろうか。畠山さんが「ゆめ」を抱き寄せて対面させると、母犬「優姫」は一瞬、せつなげな表情でわが子を見つめた。わが子が旅立つ先は、遠いロシア。母娘にとって、これが今生の別れだ。

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 「ゆめ」はこのバリケンネルで、長旅をする。外面には名前、そして日本語とロシア語で「よろしくお願いします」と記した。初めての対面でプーチン大統領は、大きくしたためられたこの文字を目にし、何を思うのだろうか。

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 これは「ゆめ」と同胎(同じ日に同じ母親から生まれたきょうだい)の血統書。旅立ち日に1頭だけ残されていたきょうだいは名前が決まっていなかったため「犬名無し」と書かれているが、プーチン大統領に手渡される血統書には「ゆめ」の名前が入っている。祖父母、租々父母欄には全国のベテランの多くが知る有名犬の名が散りばめられている。秋田を代表して親善の役割を果たす秋田犬として、恥じぬ血統構成だ。

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 畠山さんが初めて秋田犬と暮らしたのは、20年以上も前。しかし、その魅力に気づいて飼育に本腰を入れ初めたのは5年ほど前のこと。30年以上の大ベテランが全国に数多くいる中では、飼育歴こそ長くはないものの、かつて1回の本部展で2頭の名誉章受章という"離れ技"をやってのけた嘉成良男氏(追記:平成25年逝去)が指導にあたり、今では注目される犬を作り出している。「ゆめ」はその中の1頭で、今回の栄誉に「一生に1度あるかないかの、大きな思い出を作ることができた」と、畠山さんの喜びもひとしお。
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