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迎える心構え2

 迎える心構え1」では、初めて秋田犬を家族の一員とするにあたり、近所と良好な関係を築いておくことの大切さに触れました。今回はやや汚い話になりますが、秋田犬の大便、つまりウンチをテーマに少し論じさせていただきます。

 他種類大型犬の1回あたり大便量は、一様ではなく犬種によって多少の差があると推察されますが、秋田犬は当然のことながら成長するにつれて多くなり、おおむね1歳以降の食欲旺盛な健康体でラーメンどんぶり1杯にほぼ匹敵します。便秘に悩む人にすれば、「何ともうらやましい」快便ぶりです。

 これを毎日1回から2回、稀に3回する犬もいますが、そうした大量の便を片づけるのが生理的に嫌な方には、絶対と申し上げてよいほど、秋田犬の飼育は向きません。つまり、便をしたらかいがいしく片づけてあげなくてはならないわけです。

 日に1回するのか、あるいは2回、3回とするのかは、食が太いのか細いのか、どのような銘柄のドッグフードを食しているのかといった要素のほかに、その秋田犬の体質や健康状態にもよります。飼い主にとって最も楽なのは、ほぼ"定刻"にど〜んと1度だけすることです。しかし、毎日複数回小出しにし、最初は固形便なのに、その後は軟便、または下痢に近い便をする秋田犬もいます。

 また、便の臭(にお)いは肉や魚、野菜、米、パスタ、パン、菓子類など何でもありの"雑食性"の人間とは異なる独特の臭気で、「この臭いは我慢ならない」という方にも、秋田犬の飼育は向かないと考えられます。脂肪含有率が高いドッグフードほど、とりわけ臭いがきついようです。秋田犬の便臭は、時間の経過とともに薄らぎます。

 ここまでは大便の量と臭いについて触れましたが、次は排便のタイミングです。ほぼ"定刻"にする分かりやすい犬、つまり我慢する犬と、便意を催すれば時、所構わずする予測不可能な犬がおり、やっかいなのは後者です。

 室内飼育ではなく、犬舎飼育を前提とした話をすれば、ほぼ"定刻"にしてくれる犬は朝や夕方など決まった時間に犬舎から出してやったり、散歩をする前に敷地内で大便、小便の順またはその逆で出してくれるため、かなり楽です。しかし、飼い主との"暗黙の了解"なしにしたい時に勝手にしてしまう犬は、当然のことながら犬舎内を大便、小便で汚し、飼い主は「おいおい、なんでそうなんだ」と愚痴をこぼしつつ、ほぼ毎日犬舎内の便の片づけをしなくてはならなくなります。

 大切なのは、犬舎の外に出してもらった際に便をするよう躾(しつ)けることですが、子犬時など初期段階で犬舎内での垂れ流し状態を許容してしまうと、やがて常態化し、"軌道修正"に苦労を伴います。また、犬舎内にしたみずからの便を食べる犬が、きわめて稀にいます。リンゴなど甘いものを与え続けると、便もうっすらと甘くなるようで、もしこれが習慣づいてしまうと犬舎内で便をするのを治す以上の難易度となります。また、1度した便を食べるわけですから、臭気は1度目の便とは比較にならないほか、感染症を誘発しかねません。

 ところで、散歩中に路上で大便をするのと、散歩前に済ませるのとでは、飼い主にとってどちらがありがたいでしょうか。論ずるまでもありません。当クラブ実践の方法を1つご紹介しましょう。自宅の敷地にある程度の広さを確保できているのが理想ですが、餌を与える前にリードをつけ、8メートルから10メートル程度の直線距離を往復します。リードを持ちつつ後方から肛門を観察すると、数往復または十数往復で徐々に犬の肛門が広がってきます。

 これは「もうすぐ出るよ」という愛犬のシグナルです。そして、おもむろにしゃがみ込みます。その際、リードを持つもう一方の手にはA3判ほどのサイズで2つ折りまたは3つ折りにした新聞紙、あるいはペットシーツを持っています。それをしゃがみ込むのとほぼ同時に、地面とお尻の間に差し込みます。

 最初はなかなかタイミングをつかめず、大便の一部が紙からはみ出ることもありますが、数日後には取りこぼすことなく紙の中にすべて納まるようコツをつかめます。地面に直接したのを片づける方もいるでしょうが、地面をある程度水洗いしなくてはならないこともあるでしょうし、季節によっては糞(フン)を片づけた後にハエが群がって不衛生なこともあります。

 紙の上にさせてしまえば、そのまま専用袋などに捨ててしまえるわけですから、かなり楽です。それを習慣づけて散歩に出かけると、複数回小出しではなく1度だけ用を足す犬は、あらためて路上に大便をすることはほとんどありません。

 ただ、ここで重要なことがあります。「うちの子はもうしてきたので、道路ではしませんよ」ではなく、たとえもうしなくても袋など排便後の処理をする道具を携帯しながらの散歩をお奨めします。

 散歩コースには、根っから犬嫌いの人がいたりします。そうした人たちは、犬が散歩中に路上で排便、排尿することをとりわけ不快に感じます。また、たとえ路上でしないよう躾けても、散歩中に袋などを持っていない人を見かけると、どのような管理しているのかをまったく知らないわけですから、「ウチの家の前で糞をさせるつもりなのか」という視線を家の中などから注ぎます。つまり、路上で便をしようがしまいが、犬嫌いを含む周囲の人たちの理解を得るためにも、便の処理道具は必需品だということです。

 ここ秋田県大館市でも、犬種に限らず処理道具を持たずに散歩をしている人を老若男女見かけます。秋田犬の発祥地、かつ、一部地元新聞などは見出しに「犬都」という描写をするほどの特異性がある地方にも関わらず、最低限のマナーを守れない人が少なくないのは残念なことです。

 今回は大便を中心とする排泄物の処理などに触れましたが、1度に大量の便をする秋田犬とうまくつきあっていけるのか、周囲や社会に対してマナーを徹底できるのかなどを十分考えてから、家族の一員とするかどうかの結論を出すことをお奨めします。

 秋田犬は、飼い主の皆さんにとって「忠犬」になる可能性を十分に秘めています。しかし、「迎える心構え1」でも述べましたが、安易な気持ちで迎えられる犬種ではありません。迎えるには、一大決心が必要です。その点を、強く肝に銘じておきたいものです。

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