これに対し、脚をはじめ体全体が細身で、走るのにうってつけなのが扁平型。サルーキーやボルゾイなどが、このタイプです。また、肋骨が丸く張っていて胸の深さがひじまで達しているのが樽型で、パグやブルドッグなどがこれに属します。

　下段の画像のうち、横向きに近い角度から撮影した右側の画像をご覧ください。背中がほぼ一直線に見えますね。これにより、秋田犬の背は水平型なのが判ります。ちなみに、パグやブルドッグなどが湾曲型、そして弓型にはグレーハウンドなどがおります。

　　　　　　　　　　　　　　　　  　　秋田犬は中頭種

　頭部はどうでしょうか。犬の頭部には長頭、中頭、短頭の3種類あり、このうち秋田犬はちょうど中間の中頭種に属します。コリーやボルゾイなどが長頭種、パグやブルドッグなどが短頭種です。頭部に関連して、嗅覚に触れてみましょう。犬の嗅覚は人間の約100万倍にのぼることは、多くの皆さんが知っていることと思います。では、長頭種、中頭種、短頭種の中で嗅覚がやや劣るのはどれでしょうか。正解は、鼻腔が短い短頭種です。逆に長頭種は最も優れているため、狩猟などでの活用が少なくないのもうなずけます。秋田犬は中頭種ですので、嗅ぎ分ける力は長頭種と短頭種の中間といえます。

　　　　　　　　　　　　　　　    　　秋田犬は直立耳

　次は耳の形状です。犬の耳には直立耳、垂れ耳、半直立耳の3タイプあります。下の画像を再度ご覧ください。秋田犬の耳は、ピーンと立っていますよね。これにより、秋田犬は直立耳であると判別できます。

　秋田犬は、早い子で生後60日ごろから、通常は70日を過ぎたあたりから立ち始めます。ここで問題です。小さく薄い耳を持った秋田犬と大きく厚い耳を持った秋田犬。耳の形状に関して、どちらが"正統派"でしょうか。正解は、大きく厚い耳を持った秋田犬です。小さく薄い耳を持った子ほど、早く耳が立ち始めます。

　耳は秋田犬の威風堂々さを示す重要なパーツですが、厚く大きな耳に恵まれていないにもかかわらず、全国大会に位置づけられる本部展で最高峰の名誉章を獲得する犬がおります。これは、耳の欠点をほかのパーツでカバーできるだけの総合的な完成度で群を抜いているためです。

　また、稀なケースですが、両耳または片耳だけ立たないまま成長する秋田犬もいます。これは耳の大小や厚薄に関係なくみられ、先天的なもの、さらには野犬に噛まれて左耳が立たなくなった忠犬ハチ公のような後天的な例もあります。尾もまた先天的、後天的な原因で巻かなくなるという点では耳と同様ですので、秋田犬にとって耳と尾はとりわけデリケートなパーツであると認識すべきでしょう。

　耳に関連してもう1つ。最近は、シェパードやロバのような長めの耳をもつ秋田犬が目立ってきたのは気になるところです。生後50〜60日程度では比較的その兆候が現れず、100日を過ぎたあたりから現れるケースが多いように見受けられます。

　以前、少なくとも20年ほど前にはほとんどいなかったように思えますが、当クラブもここ数年で相当数確認しております。例えば、近親交配などを原因とする遺伝性であれば将来的にあるべき方向に導けるかも知れませんが、それ以外の未知の原因だとすれば今後も"ロバ耳"タイプの秋田犬が減ることはないでしょう。

                              　　　警察犬としての資質は?

　警察犬の代表格としてシェパードが挙げられますが、当クラブは審査員として秋田犬界に名を馳せた大ベテラン(故人)に質問したことがあります。「秋田犬の、警察犬としての資質はどうでしょうか」。生涯秋田犬と生活をともにした先人は、こう答えました。「確かに、シェパードは飲み込みが早い。これに対し、秋田犬は憶えるのにシェパード以上の時を要する。しかし、秋田犬は一度憶えたら絶対に忘れない。秋田犬が警察犬に向くかどうか、おのずと答えが出るのではないか」と。

　秋田犬が警察犬として適応できるか否かの正解を彼は語らなかったのですが、明確に示唆したことになります。秋田犬だけの特別なプログラムを組んで訓練すれば、一度憶えたら絶対に忘れないという特性を最大限に引き延ばし、警察犬としてシェパード以上の能力を発揮するシーンもあると。誰も試みてはいませんが、非常に興味深いことと思います。